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男子はいつまでも中2病、がコンセプトの将棋ブログ。

「未熟な奴だ」と風は笑う

「限界まで頑張ったんだ」と言った声は掻き消されていく気がした。
さぁ、リスタートしようか。

さて、名人戦を終えてガスが抜けた風船のごとき私でありましたが、今日は北國王将杯が行われました。北陸三県の強豪が一度に会する大会です。
対局に力を温存するために運転手(キノ)を召喚し、小松の地に乗り込みました。

予選は石川ルール(1勝通過2敗失格方式)で、N埼さんとまず対局。
戦型は相手の立石流。後手番ということもあり玉頭の位を張って自然に指したものの、手待ちを入れながら上手く打開されてしまいます。飛車を成られて「ちょい悪」という感じでしたが、歩の手筋を駆使して逆転に成功。最後は綺麗な寄せが決まって、○。

トナメの前に昼食タイム。モグモグ前に対局時計の籤機能でボタンを押したものの、当たりは確認せず。
キノ「トーナメント表見ましたか?」
こた(仮「いや、見てない」
キノ「…そうですか」
こた(仮「?」

MGMG中。
勝手さん「こた(仮くんは相変わらず籤運が悪いなぁ」
こた(仮「へ?」
キノ「そうですよね」

というわけで一回戦、相手はW塚五段。なぜ教えてくれんしw
戦型は彼お得意の四間飛車。たまには相振りをしたい気持ちもあったのですが、居飛車でトーチカを選びます。序盤に独自の工夫を入れましたが、T田さんやS戸川相手にも以前指していて、経験はあった指し方。ただちょっと定跡書で見かじった程度の変化(仕掛け)になって、その後の精査ができていませんでした。強襲に踏み切ったものの、正確に対応されて無理筋に。なんとか離されないようにと頑張りましたが、きっちりまとめられました。完敗で×。

牡丹(仮名)に久々のエンカウント。…だれ?w

(鬱憤晴らしに)誰彼構わず将棋を指しまくっていましたが、ベスト4の対局が始まったところで帰宅の途に着くことに。件のW塚くんが残っていましたが、結果は?

「この大会のために、2週間ほど本気で取り組んできたけど、ひどい将棋を指してしまった」と嘆いている人がいました。
でも考えてみてください。貴方が何十年もかけて培ってきた将棋は、きっと誰かに2週間程度でどうこうされるものではないでしょう。
結局、めげずに続けるしかないのです。私なんて2か月かけても結果を出せませんでしたw

とりあえずトーチカの研究から始めました。
そして2年かけて名人戦の対策を考えるぜ!(あれ、来年に間に合ってなくね…?)

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KKK 2021/10/2

土曜日に行います。


-定跡外の整合性担保-

今回のお話は相振り飛車の△4四角型について。
比較的マイナーな定跡なので、まずはどのような局面のことなのかを見てみましょう。

初手からの指し手
▲7六歩    △3四歩    ▲7五歩    △1四歩    ▲1六歩    △5四歩
▲6六歩    △4四角    ▲7八飛    △2二飛    ▲2八銀    △2四歩
▲3六歩    △2五歩    ▲3七銀



この相振り△4四角型は奇異な形ながら有力な作戦です。
▲7八飛△2二飛と相振りが確定した後、先手には様々な駒組みが考えられます。ただ後手は△4二銀~△3三桂~2筋交換が実現すると、1筋の端攻めも残っており、良い意味で軽い形です。そうなると先手作戦負けに陥りやすいので、今回は矢倉での対抗が可能かどうかを検証します。矢倉にがっちり組めれば、△4四角型は負担になりそうです。

上図からの指し手
△3五歩    ▲同 歩    △同 角
▲4八玉    △2六歩    ▲同 歩    △同 角    ▲同 銀    △同 飛



矢倉に組んでじっくり指したい先手でしたが、後手の強襲が成立しました。まだ難しいところはありますが、後手やや良しの定跡です。
ただし、改めて調べると△3五歩▲同歩△同角には▲7四歩と突っ張って難解、というのがソフトの見解です。乱戦に持ち込めたという意味で、一応後手成功ということにしたいと思います。

しかしながら、石田流対策として考えたとき、解消しなければならない課題は残っています。それは△1四歩に先手が受けてくれない場合です。そのときは"△1五歩と伸ばして居飛車にする"というのが相場ですが、1つの作戦に振り飛車と居飛車の可能性があるのはハードルが高いかもしれません。
ただ1筋の挨拶を省略すると、先ほどの矢倉に対する強襲が成立しなくなります。(上図で▲1五角が王手飛車!)

では1筋を突かない場合、この△4四角型の作戦は使うことができないのでしょうか。
さて、ここからは自らの力で道を拓きますよ。

初手からの指し手
▲7六歩    △3四歩    ▲7五歩    △5四歩    ▲6六歩    △4四角
▲7八飛    △2二飛    ▲2八銀    △2四歩    ▲3六歩    △2五歩
▲3七銀    △3三桂    ▲4六歩    △4二銀    ▲3八金    △7二金
▲6八銀



強襲が不成立のため、お互い駒組みに。先手の組み方はとりあえず妥当でしょう。
後手は△7二金で△6二玉、△8二銀、△7二銀、△6二銀なども考え得るものの、三間飛車に対して△7二金の方が上部に厚い意味があり、今回は本手とします。

上図からの指し手①
△6一玉    ▲6七銀    △8二銀    ▲9六歩    △9四歩    ▲4八玉
△6二角    ▲5八金    △4四歩    ▲3九玉    △4三銀    ▲2八玉



後手は先手のように(矢倉にして)盛り上がりたいものの、先手が7筋交換をしてこなければ叶いません。そこで当たりにされそうな角を△6二角と引き、一旦△4四歩~△4三銀と整備する順が見えます。
ただ先手にゆっくり囲われると、いよいよ指し手が難しくなってきました。

上図からの指し手
△2一飛    ▲4七金左  △4二金    ▲1六歩    △1四歩    ▲8六歩
△8四歩    ▲7六銀    △8三銀    ▲7七角    △5二玉    ▲8八飛
△7四歩    ▲同 歩    △同 銀    ▲7五歩    △8三銀    ▲6五歩



△2一飛~△4二金はしょうがないのでバランス型への移行。
△8四歩は銀冠を見せて「▲7四歩、来い!」という手ですが、そうはなりません。(ちなみに△8四歩は狙われるため、バランス型にして後手の玉を左辺に逃がせるようにしないと突けない。)△8四歩に▲7四歩△同歩▲同飛なら、△8三銀~△5二玉として△7三角の活用を見ることができるのですが…。
図まで進むと先手が十分。△7三角なら▲8五歩と合わせて攻めたとき当たりになりますし、△5三金~△4二玉のように組み換えようとすると▲5六歩~▲5五歩ぐらいで打開して良し。△4五歩と自分から攻める手もありますが、暴発気味で気が引けるところです。

指し手②
△6二銀    ▲6七銀    △6一玉    ▲4八玉    △7一玉    ▲5八金
△1四歩    ▲9六歩    △9四歩    ▲7四歩    △同 歩    ▲同 飛
△7三歩    ▲7八飛    △5三銀左



盛り上がれないのなら△6二銀は妥当。
玉を右に囲う場合、△7一玉としたら後手は攻めたいところです。しかし先手の矢倉の堅陣の前に、簡単に攻めに出ることはできません。
△5三銀左で4四の角が恐ろしく狭くなりましたが…

上図からの指し手
▲3九玉    △2一飛    ▲5六歩    △4二金    ▲4五歩    △2六歩
▲同 歩    △同 角    ▲同 銀    △同 飛    ▲2七歩    △2一飛
▲4七金左



▲3九玉~▲5六歩~▲4五歩は、後手の陣形を咎めに行く指し方。△4五同桂なら▲4六銀で桂を取ることができます。
しかし△2六歩から角銀交換に出るのが明るい手で、上図まで進むとソフトは互角の評価値。以前角換わりの記事でも同様の筋を取り上げましたが、ソフトは陣形の配置を重視し、後手の陣形の評価が高い(加えて先手の陣形の評価が低い)と思われます。以下は△3五歩~△4五桂と猛攻するか、一度△1五歩とするか。いずれにせよ、後手はこの展開を目指していいのかどうか、すぐには判断ができません。
また、先手が▲4五歩とせずじっくりした展開も変化が広く、現状では「判らない」というのが正直なところです。

指し手③
△6二銀    ▲6七銀    △5二玉    ▲4八玉    △2一飛    ▲5八金
△3二金    ▲3九玉    △6四歩    ▲4七金左  △6三銀    ▲2八玉
△1四歩    ▲1六歩    △1二香



最初からバランス型を目指すのはどうでしょうか。後手は金開きに構えます。
△3二金に対し▲5六銀は、△5五歩▲4五歩に△2六歩▲同歩△同角で先手が危険。
また△6四歩に▲7四歩は1局ですが、後で△7三桂と使われる可能性はあります。
△1四歩▲1六歩△1二香から△1一飛を見せておけば、ほぼ互角の将棋と思います。

結論:1筋を突かずに△4四角型が成立するかは不明。
後は人体実験だ!w

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KKK 2021/9/26

日曜日に行います。


青野流の連載で、前回は(7)△5二玉~①△7六飛と横歩を取る変化の、①-1▲7七桂とする手を見てきました。今回は主流をなす①-2▲7七角の変化ですが、さらに細かくなりますw
これには①-2-1△2六歩、①-2-2△同角成、①-2-3△7四飛、①-2-4△8二歩という手があります。

指し手①-2
▲7七角



指し手①-2-1
△2六歩    ▲8四飛    △8二歩    ▲8三歩    △7二金    ▲3三角成
△同 金    ▲8五飛



△2六歩に▲3八銀と受けるのは、基本図から△2六歩▲3八銀△7六飛▲7七角の変化と同一なので、そのときに解説します。
本譜の場合は▲8四飛と回るのが有力といわれています。▲8三歩△7二金で壁金の形にさせて、▲8五飛で▲2五飛を狙うのが△2六歩を咎めようとする手順です。

指し手①-2-1-1
△3二金    ▲7七金    △7四飛    ▲8二歩成  △同 銀    ▲8三歩
△同 銀    ▲5六角



△3二金では△2七歩成とした実戦もありますが、さすがにこれでは後手がつまらないでしょう。△3二金は△2二銀を用意した手ですが、▲7七金がありました。▲7七金に△3六飛は、▲2五飛△2二銀▲4五角でピッタリ飛車が詰んでいます。
よって上図まで進みますが、▲5六角と打てば角で飛車を取れる形。先手指せる。

指し手①-2-1-2
△7四飛    ▲2五飛    △2四金    ▲2六飛    △2五歩    ▲2八飛
△8三歩    ▲7七角



▲8五飛には△7四飛が有力で、今度▲8二歩成とするのは、△同銀▲8三歩に△7一銀で難しい。以下▲8二角には、△9四角▲8八飛△8二銀▲同歩成△8七歩▲同飛△7六角打で後手有利。
よって当初の狙い通り▲2五飛と指しますが、△2四金が力強い進出です。△8三歩と手を戻したときに先手の指す手が難しく、△5五角の傷を消す▲7七角を本譜としました。
形勢はほぼ互角と思われますが、後手を持ってまとめるのは大変な印象です。

指し手①-2-2
△7七同角成  ▲同 桂    △5五角    ▲2二歩



▲7七角に△同角成は、△5五角と打つのが狙い。△7七角成と△1九角成の両狙いです。先手はやはり▲2二歩が手筋の反撃となります。

指し手①-2-2-1
△同 角    ▲6八銀    △8六飛    ▲8七歩    △8二飛    ▲3七桂



この場合、▲2二歩に△同角は少し緩そうな感じです。
△8六飛に代えてもう一度△5五角は、再度▲2二歩と叩かれ、△同角▲3七桂△8六飛に▲4五桂からドンドン攻めて先手有利。
上図まで進むと先手が好形です。

指し手①-2-2-2
△3三桂    ▲2一歩成  △4二銀    ▲2三歩    △同 金    ▲8四飛
△4五桂    ▲6八銀    △8二歩    ▲2八歩



よって▲2二歩には△3三桂。▲2三歩と垂らして形を乱してから、▲8四飛と回ります。
そこで△4五桂と跳ねますが、△8二歩と単に受ける手が第1感でしょう。しかし△8二歩には▲6六歩で先手有利が定説で(▲2四歩と打っても先手良しか。)、以下△4五桂(△同角は▲8七飛で受かる)▲6七角△6六角▲6八銀△8四角▲7六角…で、難解ながら先手よし(▲2三歩△同金で形を乱した効果が出ている)。
本譜は▲6八銀~▲2八歩と受けるのが冷静で、先手が指せそうです。△8二歩では△1九角成▲8一飛成△2九馬という攻め合いもありますが、▲8五角でやはり先手指せそう。

指し手①-2-3
△7四飛    ▲同 飛    △同 歩



ここまでを見てきた限り、▲7七角は先手よしの変化が多そうです。そこで△7四飛とぶつけてしまう手が最有力と思われます。飛車交換になれば局面が茫洋とするので、お互い勘所が難しくなります。

指し手①-2-3-1
▲2四歩    △2二歩    ▲8三飛    △8二歩    ▲8五飛成  △2四角
▲3八銀    △5一角    ▲3五龍    △3三角



▲2四歩~▲8三飛は竜を作ってじっくり指す方針です。△5一角は、▲7四龍なら△7三角▲3七桂△2八飛と後手も飛車を打とうとしていますが、▲3五龍が方針に沿った手。▲2二角成があるので△3三角とぶつけて、ほぼ互角の将棋です。

指し手①-2-3-2
▲3七桂    △7七角成  ▲同 桂    △8六歩



▲3七桂の方が実戦例が多い手です。
以下△2九飛と打った実戦もありますが、▲4五桂△4四角▲8二歩△同銀▲4四角△同歩▲5五角△7一角▲8三歩△7三銀▲7二歩△同金▲4四角、と実戦そのままの進行で先手優勢。
また△4二銀は有力で、▲4五桂△7七角成▲同桂△3八歩▲同銀△3七歩とすれば後手も飛車を打ち込むことができます(形勢不明)。

指し手①-2-3-2-1
▲6五桂    △8七歩成    ▲同 金    △8九飛    ▲8八角    △8六歩
▲7七金



本譜の展開はタイトル戦で指されており、竜王戦の広瀬vs羽生戦。
△8六歩の垂れ歩に▲6五桂と元気よく跳ねました。以下も超難解な折衝で、形勢不明。

指し手①-2-3-2-2
▲8八歩    △6四角    ▲3八銀    △2八飛    ▲6九玉



これもタイトル戦、名人戦の豊島vs佐藤天彦戦です。ビッグタイトル戦の舞台で指されるような、当時大きなテーマとなっていた手順であることがわかります。
じっくり指す展開で、漠然と「これじゃあ先手が面白くなさそう」と思われた手順を、豊島さんが引っ張り出してきました。一見元気が出なさそうですが、手持ちの飛角を活かせるかどうか。いい勝負です。

指し手①-2-4
△8二歩    ▲3七桂    △7七角成  ▲同 桂    △3三金    ▲3五飛
△4四角    ▲4五桂    △3五角    ▲同 歩    △4四金    ▲2二歩



△8二歩を初めて見た方は、「えぇっ、なにそれ!?」と言いたくなるのではないでしょうか。部分的には指されている手で、△6二玉型ではタイトル戦で出現しています。
△5二玉の場合はどうかですが、△7七角成~△3三金とした実戦があります。▲8四飛を先受けされているので▲3五飛としましたが、△4四角以下難解な将棋となりました。▲3五飛ではそれでも▲8四飛が良く、以下△5五角▲4五桂△4四金▲2二歩と進むと先手が指せそうに思います。
△8二歩と打つ将棋は、これからの課題と言えそうです。

さて、①△7六飛~△8二歩という変化が出てきたので、△7六飛の前に②△8二歩はどうでしょうか。

指し手②
△8二歩    ▲7七桂    △7六飛    ▲3七桂    △7五飛    ▲7六歩
△5五飛    ▲6八銀



②△8二歩はほとんど実戦例がなく、先手の指すべき手がわからない、というのが正直なところ。歩が立たなくなったので、一例として▲7七桂が考えられます(これで①-2-4と別の変化に)。
上図まで進んで飛車が5五に鎮座するという凄い形ですが、形勢はほぼ互角と思われます。

次回は③△2六歩です。これまた主流の難しい変化。
まだまだ続くよ!

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虚栗(みなしぐり)

今日は県名人戦3番勝負が行われました。
相手は福井県将棋界の若き第一人者、2438名人です。圧倒的実力者で既に8連覇中ですが、間違いなく十数年先まで県棋界をリードし続けるでしょう。
そんな相手にどう戦うか、挑戦が決まってから私は綿密に作戦を立てました。準備万端、(いろんな意味で)気合は周囲にも伝わっていたかと思います。

解説はキノ&S戸川。「振り飛車をお願いします」→「でも全然知らなそうな戦型にして二人があたふたするのも面白くない?」

第1局、先手番を得る。戦型は相掛り、密かに切札として研究を深めていました。振り駒が終わったときから、この1局が非常に重要だと思っていました。そしてたぶん、解説の二人は「相掛りですか…」となっていたに違いないw
しかし序盤に関しては、2438くんが非常に手堅い駒組みを選んだため、かっちりとした想定局面からは外れることに。(実際どれだけ研究しても、それが毎回出ることはあり得ない。)激しい変化を深くまで(変化によっては100手弱まで)研究していたので、ちょっと悲しい気分ではあったw 実は序盤の駒組はやや危険なところがありました(帰ってから「そういやそんな変化あったな…」と思い出しました)が、持久戦調になって一応ほぼ予定通りの組みあがり。ソフトの評価値では既に+であることはわかっていましたが、ここからが当然難しい。中盤の戦い方も蓄積はあるものの、読みはしっかり入れる必要があります。2438くんが積極的に動き、難解な局面に。強気に▲5四歩と行ったのが良い判断だったようで、形勢は優勢になりました。ただ自玉が薄いのでマジ怖い。「こた(仮くん震えてたね」とか言われましたが、そりゃ震えますw しかしそんな恐怖を振り切り、▲8五飛と切り合いに行ったのが決め手。自玉との難解な兼ね合いを読み切り、○。会心のスタート。

お昼時間。
2438名人「(県内で)2年ぶりに負けました」
こた(仮「スケールがおかしくない?」

第2局。後手番は相手より研究を上回っても、有利にするのは至難の業です。序盤に工夫を凝らすことで、2438くんの土俵には入らないようにということは考えていました。
4手目△9四歩、6手目△3二金は相手の手を見て戦型そのものを切り替える作戦です。本局は雁木に。実はこの戦型はいろいろと考えた末、1週間ほど前に決まりました。そのせいかどうか、序盤はちょっとチグハグな感じになってしまいました。
作戦負けと見て△4五歩から動いたのは勝負手。しかし△4二桂の自陣桂はやりすぎで、上手く動かれて完全に失敗しました。しかしあまりにも上手くいって慎重になるのが勝負の綾か、飛車を大事にしたのが2438くんには珍しい悪手。形勢は混沌とし私も逆転模様だと思っていました(実際は逆転まではいっていなかったか)が、この辺り既に秒読みで、どうも私は読みがまとまらず混乱していたようです。家に帰って棋譜を並べると、どうも記憶の読み筋と棋譜の手順が合致しないw どうりで感想戦で話がかみ合ってないわけです…。
敗着はそんな折に指した△5五桂~△4七桂成で、普通に▲1八飛と逃げる場所があるのをうっかり。ただここは唯一のチャンスだったようで、△6九銀で矢倉に噛み付けば難解でした。2438くんは真っ先にこの手を指摘されたので、形勢判断も含めてさすがだと思います。
投げ所を無くしてだらだら手数だけ長らえたものの、最後は大差で×。

第3局。再度の振り駒で先手に。当然後手になっても(別の)作戦は立てていましたが、先手を取れたのはまだ運が残っているかと前向きに解釈しました。
戦型は先手中飛車。のちに解説会で急にS戸川が饒舌になったとの情報アリw
2438くんは対して△5四歩と位取りを拒否する指し方を得意にしていますが、本局は流行の後速に。そして相穴熊に進みました。
2438くんにこちらの研究を外す意図があったかはわかりません。ただ実は序盤の駒組みで、わざと少し時間を使っていました。…研究のレール上だと悟らせないために。そして、仕掛けの局面になって急に加速するというw
研究の局面から外れて少ししたところでは、既にこちらが有利な局面。飛車を取って一気に優位拡大を狙います。しかし2438くんも本領発揮、△5六角と打った手が好手(どうやら直前の▲5四歩が疑問手だった)。形勢不明の難解な中盤に突入します。そのまま終盤になだれ込みますが、強く指して直観では勝ちがあると思っていました。2438くんは秒読み間近でしたが、私は少し前にまとめて読みを入れて直前までノータイム指し。10分残していた。我ながら、タイムマネジメントは完璧だったと思う。
▲3七歩と受けに回るか、本譜の▲2三銀で決めに行くかを迷っていました。実は▲3七歩でも長引くものの、形勢自体は少し有利ではと思っていました。しかし▲3七歩とすると、△1四馬▲4三竜△4一香、が妙手。△1四馬、△5五飛、△6四角が見事に働く寄せがあってこちらが敗勢でした。今思うと2438くんは気付いていたようで、これを選ばなかったのは実はラッキーでした。
しかし▲2三銀にはいろいろと粘る手が見えます。しかしちゃんと決めにいかなければ彼には勝てないし、危険地帯を爆走するのが私の棋風ですw そこで残っていた10分を、ここで投入することになりました。正直に白状すると最初の5分は△同金を読んでいて、これは▲3二銀で簡単に勝ち(▲3二金が第1感だったが、これは△3一香で負け。しかし結果的にここで5分ロスしたのは痛かった)。他に△4八馬、△5二飛、△3一香などがあり、△4八馬は時間が無くて読み切れていなかったものの推定詰み。△5二飛は自玉が銀2枚渡してもギリ詰まないので、▲2二銀成△同飛▲3三銀でおそらく寄り。△3一香がむっちゃ難解で時間を要しましたが、正確にやれば必至がかかりそう。結果的にですが、読み自体は正しかったと思います。
しかし▲2三銀に2438くんの指し手は、鬼手△1四馬!ひえぇぇぇ、全く見えてない!しかしこの瞬間が、一番名人に近づいていました。▲3二銀打なら先手勝ち。しかし時間に追われ手が伸びたのは、▲2二銀成…
最後は持ち駒を完璧に活かした超ピッタリの詰みに討ち取られ、×。

あぁ…(断末魔

はっきり言えば、今から私が彼と同じ実力を身に着けるのは不可能でしょうし、今日以上のパフォーマンスは出せません。最後は勝ちがあったと言っても、それを指せるかは(私の力では)指運です。あと思い付くことといえば藤井三冠みたく、Threadripper 3990X(50万円ぐらいするパソコンのパーツ)とディープラーニング系ソフトを導入するくらいしか手がありませんw

残念ながら手に取った栗は実無しでした。
もう一度拾うチャンスは、果たして。

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KKK 2021/9/11

今週末は土曜日に行います。
来週末は県名人戦(9/19)の特訓をしているため、お休みさせてください。


-振り飛車新時代-

つい最近まで、振り飛車の囲いと言えば、ほぼ美濃囲い一択でした。(あとは穴熊があるぐらい。)

一体いつから美濃囲いは存在したのでしょうか。
調べてみたところ、実は江戸時代の中期~後期には、もう美濃囲いが指されていたようです。とても長い歴史を持つ囲いですが、戦前は△7二玉型で戦うような振り飛車も多く指されていました。(江戸時代の将棋、つまりは御城将棋だが、残存する棋譜によるとということ。昔は中央の手厚さを重視していたため、玉を深く囲うことは主流にはならなかった。)
美濃囲いが当然のように選ばれるようになったのがいつなのか、私には正確なところはわかりませんが、戦後から美濃囲いが主流になったのではないかと思われます。(大山一強時代の1960年ぐらいにはもう美濃だけだった。)

さて、それほど長い時代の間、美濃囲いは振り飛車で最も優秀な囲いと信じ続けられてきたわけですが、現代ではそれが見直されていることは、私も以前から言及してきました。それは振りミレ(トーチカ)や耀龍(2枚金の形)という居飛車穴熊対策の囲いでしたが、実は急戦系でも美濃囲い以外で戦う作戦が考えられています。

というわけで、今回は四間飛車の金美濃作戦をご紹介します。

初手からの指し手
▲7六歩    △3四歩    ▲2六歩    △9四歩    ▲9六歩    △4四歩
▲4八銀    △4二飛    ▲5六歩    △6二玉    ▲6八玉    △7二玉
▲7八玉    △3二銀



ここまでの手順に特に違和感はないかと思いますが、後手は△4一金型を維持するのが作戦のポイントです。△5二金左と上がってしまうと金美濃との相性が悪く、今回のテーマとは別の作戦になります。
先手の急戦策として、(1)エルモ囲いと(2)▲5七銀左型急戦について見ていきます。

上図からの指し手(1)
▲5七銀    △4三銀    ▲2五歩    △3三角    ▲3六歩    △8二玉
▲6八銀上  △6二銀    ▲7九金    △7二金



△8二玉~△6二銀~△7二金の形が「金美濃」囲いです。名前に"美濃"と入っていますが、全然美濃じゃないですねw(ちなみに△6三銀型になると「木村美濃」になる。これは一応美濃囲いから派生するが、やっぱり美濃ではない。)
一方▲6八銀上~▲7九金はエルモ囲いで、こちらは昔から囲いの形としては存在していたものの、現代で新たな戦術として取り入れられて名前が付いたもの。現代では急戦系の囲いとして、お手軽でまぁまぁ堅いとの評判で、出現確率としては最も高いでしょう(舟囲いという汎用性の塊のような奴は除く)。

上図からの指し手①
▲4六銀    △4五歩    ▲3三角成  △同 桂    ▲5七銀引  △2二飛
▲5八金    △5四歩    ▲6六歩    △6四角



▲4六銀はエルモ囲いで一番シンプルな仕掛け。先手の陣形だけなら、プロでも何局も指されています。
対して、いきなり△4五歩が今までありそうで無かった対応方法です。角交換の後△2二飛と受ければ、攻めを収めることができます。
▲5八金~▲6六歩は自然な第2次駒組み(正確にはやや疑問か)ですが、いきなり△6四角と打つ手がありました。

上図からの指し手
▲3七角    △同角成    ▲同 桂    △5三銀    ▲4八金    △4四銀右
▲8八玉    △2一飛    ▲7八金    △4二金    ▲6七銀    △3五歩
▲2六飛    △6二角



先手は▲3七角と合わせるのが自然な対応。しかし△同角成▲同桂と桂をわざと跳ねさせた後、△5三銀~△4四銀右と力強く繰り出すのが良い手です。
以下自陣整備してから△3五歩と桂頭攻めし、後手有利。▲2六飛には△6二角と数を足す手があり、かえって飛車まで召し取られそうです。

指し手②
▲4六銀    △3二金    ▲3五歩    △4五歩    ▲3三角成  △同 桂
▲5五銀    △5四歩    ▲6六銀    △3五歩



▲4六銀には△3二金と上がる手も有力。左辺は軽く捌く従来の振り飛車ではなく、全体でバランスを取るのが基本的な姿勢です。△3二金型と金美濃が相性の良い形というわけですね。
▲3五歩にはやはり△4五歩と反発し、上図まで進めば後手指せる形勢です。

指し手③
▲1六歩    △1四歩    ▲4八金    △5四歩    ▲3八飛    △3二金
▲3五歩    △同 歩    ▲4六銀    △4五歩    ▲3五銀    △8八角成
▲同 玉    △6四角



いきなり▲4六銀と出ても上手くいかないので、▲1六歩~▲4八金と自陣に手を入れ、▲3八飛と寄るのがちょっとしたジャブです。対して従来の常識だと△3二飛とするのが「普通」ですが、やはり△3二金とするのがこの形には合っているでしょう。
▲3五歩~▲4六銀にはまたもや△4五歩の対抗策一本で、△6四角とこのラインで牽制すれば急戦は挫折します。後手十分。

エルモ編はこれぐらいで区切りとしますが、実は私も実戦でこの展開を指しています。去年の県名人戦挑戦者決定戦決勝、vsW塚五段戦(私が居飛車側)です。
その将棋はお互いバランスを取りながら駒を組み替える、難解な神経戦に進みました。こうなると全くアマチュア向きではないですが、1局の将棋となります。(当時のブログで、たしか「この形が出るとは思わなかった」と書きましたが、普通のアマは全然気にしなくていい変化だと思いますw 高い実力を有するW塚くん(全国クラス)相手だからこそ出現した将棋です。)

指し手(2)
▲5八金右  △4三銀    ▲2五歩    △3三角    ▲3六歩    △8二玉
▲6八銀    △6二銀    ▲5七銀左  △7二金    ▲6八金上  △5四歩
▲4六歩    △3二金



次に(2)▲5七銀左型急戦の対応について考えます。
後手の組み方は全く同じです(お手軽!)。▲4六銀型の急戦については、エルモ囲いと同じ対応策で問題ありません。
▲4六歩には△3二金としておけば、▲4五歩からの仕掛けも気にする必要が無くなります。

上図からの指し手
▲3七銀    △4一飛    ▲3八飛    △5一飛
▲3五歩    △同 歩    ▲2六銀    △4五歩



先手は棒銀に出るのが最後の手段。これには△4一飛~△5一飛と中飛車に組み替えます。こうなると昔の中飛車vs棒銀の将棋とほぼ同じです。
仕掛けに対してタイミングよく△4五歩とするのは、振り飛車の呼吸。

上図からの指し手①
▲3三角成  △同 桂    ▲3五銀    △2七角    ▲3七飛    △4九角成



角交換すると△2七角の隙があり、これは後手が指せます。△3六角成を許さないのは▲3七飛ですが、△4九角成として十分。

指し手②
▲6六銀    △6四歩    ▲3五銀    △6五歩    ▲7七銀    △5五歩
▲4五歩    △5六歩    ▲4四歩    △5四銀



角交換拒否の▲6六銀には△6四歩~△6五歩と銀に働きかけ、5筋から攻めます。上図まで進むとお互い主張があり、ほぼ互角の形勢です。

この将棋はなにか、新鮮さと懐かしさが同居するような感覚がありますね。

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KKK 2021/9/4

土曜日に行います。

カテゴリーを一新しました。
KKKの予告は複数のカテゴリーに亘って存在するので、お気を付けください。


今回は青野流の最難関、(7)△5二玉型を検討します。プロ間で最も実戦例が多く、変化が広い将棋となります。
私はここ数年この将棋から逃げていたので、調べなおして心が折れそうになりましたw

△5二玉は、どこかで▲3六飛と引く以前の横歩取りに対して自然な手なので、先手は▲3六歩と青野流を表明するのがワンセット。これを下の基本図とします。



基本図から考えられる指し手は、下の6通り。
①△7六飛
②△8二歩
③△2六歩
④△8八角成
⑤△4二銀
⑥△7四歩

最初に現状認識について述べておくと、主流は①△7六飛と③△2六歩。
⑤△4二銀は実戦例はそれほど多くないものの、有力と思われます。
④△8八角成は簡単ではないですが、現状は先手十分の認識。
②△8二歩⑥△7四歩はほとんど実戦例がなく、課題の局面と言えるでしょうか。(特に⑥△7四歩は今年の6月に初めて出現した将棋)

指し手①
△7六飛



①△7六飛はおそらく実戦例が最も多い変化です。先手は次の△8八角成を防ぐ手を指さなければいけませんが、①-1▲7七桂と①-2▲7七角が指されています。しかし他に①-3▲8四飛と①-4▲3三角成も考えられるので、先にこの2つを抑えておきましょう。

①-3▲8四飛は△8八角成に▲同飛と取ることができますが、△8六歩と上から止められるのが不満。△3六飛や△5五角という筋が残っていますし、▲3八金ぐらいなら△3三桂と活用して後手の駒が伸びてきます。

また①-4▲3三角成は、△同桂▲8四飛△8二歩のときに指す手が難しい。例えば▲3八金なら、△5五角▲7七歩△7四飛▲同飛△同歩▲2八歩に△3七歩で手になっているようです。▲2八歩と打てば難しいですが、これも先手が不満な流れです。

指し手①-1-1
▲7七桂    △7二金    ▲3七桂    △6二銀



①-1▲7七桂には①-1-1△7二金、①-1-2△5五角、①-1-3△8七歩が考えられます。(早くもむっちゃ複雑になってきたなw)
①-1-1△7二金は、▲8四飛に△8三歩と受けれるようにした手。青野流の比較的初期の手で、定跡書にも多く書かれた変化だと思いますが、以前に勉強したことは正直もう忘れました…。

指し手①-1-1-1
▲4五桂    △4四角    ▲2四歩    △3三桂    ▲2三歩成  △同 金
▲4四飛    △同 歩    ▲2四歩    △3四金    ▲3五歩



▲4五桂は青野流を指す上でやってみたい手。△4四角には▲2二歩も有力です。
本譜も先手が激しく攻め立てますが、決定打にはなっていません。最後の▲3五歩には△4五金、△4五桂のどちらも考えられ、形勢不明です。

指し手①-1-1-2
▲8四飛    △8三歩    ▲3四飛    △4四角    ▲4五桂    △7五飛
▲2二歩    △同 角    ▲3五飛



▲8四飛は1歩打たせて手を渡す指し方。△4四角は▲4五桂の先受けですが、それでも▲4五桂自体は有り得る手です。
上図以下は飛車の素抜き(▲5三桂成)を防ぐため、△4四角、△7四歩、△7四飛などが考えられます。これも難解。

指し手①-1-1-3
▲3八銀    △4四角    ▲4六歩    △3三桂    ▲4五歩    △5五角
▲4八金



▲3八銀は自陣を引き締める指し方。これを活かして△4四角に▲同飛とした将棋もありますが、さすがに後手が指せそうか。
▲4六歩に△同飛と取ってしまうのも考えられ、▲6五桂で激しくなります。
本譜は少し落ち着いて、いい勝負。

指し手①-1-1-4
▲8七金    △7五飛    ▲8四飛    △8三歩    ▲8六飛    △4四角



▲8七金はかなり主張の強い手。対して△7四飛とすれば、▲同飛△同歩▲4五桂△8六歩▲同金△4四角▲8四飛△8二歩▲7四飛△7三金▲4四飛△同歩▲6五桂…が一例で難解。
△7五飛なら▲8四飛~▲8六飛と引くことができますが、これはこれで難しい。やはりいい勝負です。

指し手①-1-2
▲7七桂    △5五角    ▲2二歩



▲7七桂には①-1-2△5五角も有力です。ここで▲2二歩と打つのが頻出の手筋で、今後もよく出てきます。さすがに相手をする必要がありますが、△3三桂と△同角が考えられます。

指し手①-1-2-1
△3三桂    ▲2一歩成  △4二銀    ▲8四飛



△3三桂は退かないという意思表示。以下▲2一歩成△4二銀に▲8四飛と回ります。ここでは△8二歩と△1九角成のどちらも有力。難解です。

指し手①-1-2-2
△同 角    ▲3七桂    △7二金    ▲3八銀    △6二銀



△2二同角も有力で、この形の場合は甲乙付け難いところ。▲7七角型でも▲2二歩は出てきますが、その場合は先手の角がより自由なので、手を渡すような△同角は指しづらくなります。
上図はやはりいい勝負。

指し手①-1-3
▲7七桂    △8七歩    ▲同 金    △7四飛    ▲同 飛    △同 歩    ▲3七桂



▲7七桂に①-1-3△8七歩は、形を乱して△7四飛とぶつける狙いです。これも変化が広く、とても難しい将棋です。現状では力戦風味で、解析不能。

よって、①-1▲7七桂は互角に近い変化が多そうというのが結論です。先手から見ても一応有力といえそうですが、現状では廃れている状態となっています。
今選ばれているのは①-2▲7七角の変化です。

まだまだ先は長いですな。。。

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KKK 2021/8/29

日曜日に行います。


-角換わり選択に至る手順前後の考察-

「角換わり」は、その戦型が確定するまでに、細かな手順前後が許容されることがほとんどです。例えば、先手の指す初手と3手目は▲7六歩と▲2六歩、どちらが先でも問題ありません。出だしの9手はいろいろな組み合わせがあり、
・▲7六歩△8四歩▲7八金△3二金▲2六歩△8五歩▲7七角△3四歩▲6八銀
・▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7六歩△3二金▲7七角△3四歩▲8八銀
のような手順を経て、10手目に△7七角成とすることで成立します。また、△3二金を省略して8手目に交換する場合もあります。

今回は「その手順前後は本当に許されるのか」を調べるマニア道(?)です。

初手からの指し手
▲7六歩    △8四歩    ▲2六歩    △8五歩    ▲7七角    △3四歩
▲7八銀    △3二金    ▲4八銀



角換わりで先手が▲2五歩を決めるかどうかは、序盤の1つのポイントです。▲2五歩を突かない場合に、△4四歩から雁木の変化の余地があることはご存じではないかと思います。
ただ、これは▲6八銀~▲7八金型がほとんどです。例えば▲7八銀~▲4八銀とすることで、雁木に対し▲6八玉からの左美濃を残すことはできないでしょうか。
後手が▲2六歩型には角換わりを避けるプランでいると、ちょっと頭をひねる必要がありそうです。

上図からの指し手
△6二銀    ▲4六歩    △7四歩    ▲4七銀



後手は自分から角交換せず、▲7八銀を咎めることを考えてみたくなります。▲7八金と上がれない形なので、第1感は急戦に弱そうな陣形に見えます。△7四歩の後、(1)△7三銀と(2)△7三桂を検証します。
ちなみに△6二銀に対して▲2五歩は、△7七角成▲同銀△2二銀で普通の角換わりに戻ります。これに▲2四歩は(このお互いの形の場合は)成立しません。(ただし▲1六歩△1四歩▲2四歩が成立する可能性はある。)

上図からの指し手(1)
△7三銀    ▲5六銀    △6四銀    ▲2五歩    △7五歩
▲同 歩    △同 銀    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛



後手が早繰り銀で攻める変化。基本的に先手がその攻めを完全に受け止めることはできません。よって居玉のまま軽く指して力戦となります。類型が無いのでこの後どうなるかは分かりませんが、ほぼ互角の形勢と思われます。

指し手(2)
△7三桂    ▲5六銀    △6四歩    ▲2五歩    △6五桂    ▲同 銀
△同 歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛



△7三桂~△6五桂もやってみたい指し手。先手は△6五桂を▲同銀と取るぐらいしかなく、あっさり駒損が確定します。しかし後手陣も不安定であり、やはり軽く指して桂の使いどころは多そうです。これもほぼ互角でしょう。
結論としては後手が棋勢を得るまではいかないものの、力戦にして主張は通るという感じでしょうか。

ただ、そもそも論として初手から▲7六歩△8四歩▲2六歩に△3二金とすれば、▲2六歩型に雁木を選ぶというミッションはクリアすることができます。(△3二金に▲7八銀だと△3四歩と突いて矢倉に誘導されるため。これは最初に先手が角換わりを目指した方針と合わない。)
じゃあ「ここまでの話って意味あるの?」と言われてしまうかもしれません。
だから "マニア道" なんです。

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KKK 2021/8/21

土曜日に行います。
来られる方はご一報を。


今回は青野流の続き。(6)△4一玉の変化について考えていきましょう。プロではかなり少数派の指し方です。
ただ、最近ではB級1組順位戦・阿久津vs横山戦で出現しており、有力な変化です。



上図からの指し手①
▲3六歩    △5一金    ▲3七桂    △6二銀    ▲3八銀    △2二銀



中原囲いに組む変化は以前も取り上げましたが、△2二銀を後回しにすることで速攻を防ぐ狙いです。
▲3六歩に△4二銀も考えられますが、△4二銀型の章で後日改めて取り上げようと思います。
▲3八銀で▲4五桂と断固仕掛けるのは、△8八角成▲同銀に△3三歩▲2四飛△2三歩とベタベタ歩を打ってしまって後手が十分。以下▲2五飛△4二銀…で難しいですが、桂を取りきることはできそうです。
さて、上図以降先手には(a)▲2四歩、(b)▲3五飛、(c)▲9六歩が考えられます。順に見ていきましょう。

上図からの指し手(a)
▲2四歩    △2七歩    ▲同 銀    △8八角成  ▲同 銀    △3三銀
▲3五飛    △2四銀    ▲3二飛成  △同 玉    ▲2二歩



(a)▲2四歩としたのが、件の阿久津vs横山戦の進行。後手の横山七段にとってはとっておきの作戦だったと推測しますが、阿久津八段も▲2四歩と新手(たぶん)で返します。ここでやはり▲4五桂と仕掛ける手も検証が必要ですが、今度は△8八角成▲同銀△2三銀▲3五飛△4四角▲7七角△7六飛で、難しいところはあるものの後手が指せそう。
△2七歩は青野流でよく出てくる手筋。先手の形を崩すことができます。
実戦は△2四銀で△2八角と打ち、▲4五桂△4四銀▲8七銀△3五銀▲2三歩成△同金▲8六銀…と飛車の取り合いになりましたが、△2八角には▲7七角で先手やや良しがウチのソフト説。しかし△2八角という手自体には警戒が必要です。
よって△2四銀ですが、これも激しい変化です。形勢不明。

指し手(b)
▲3五飛    △8二飛    ▲2五飛    △8六歩    ▲8五歩    △2四歩
▲3三角成  △同 銀    ▲2九飛    △8五飛    ▲8八歩



(b)▲3五飛にはいろいろな手があるものの、△8二飛と引く変化が有力。(▲8三歩~▲8四歩と叩かれる手が消えたため。)▲2五飛とすれば△2八角や△4四角は消えるものの、△8六歩にどうするか。▲4五桂とするのも考えられますが、△8七歩成▲3三桂不成△同桂▲同角成△同銀▲2一飛成△3一歩とこれまた激しい順に突入します。これも形勢不明です。
▲8五歩はのちに△8五飛と取ることができますが、▲7七桂が当たるのが気になるところ。上図以下、△5四角と△3一玉の実戦例があり、難解です。

指し手(c)
▲9六歩    △9四歩    ▲8七歩    △8二飛    ▲7七桂    △4四角
▲2四飛    △6四歩



(c)▲9六歩は角の可動域を広げた手。対して△9四歩と突き返すのは気が利かないようですが、先手に有効な手が無いのを見越しています。(仮に▲1六歩でも△1四歩と受けておきます。)
▲9六歩△9四歩の交換を活かすなら▲7七桂なのですが、△4四角が一旦桂の当たりをかわす手筋で、1局の将棋。
▲8七歩は手堅い手で、△8二飛で△8五飛なら▲7七桂△8二飛▲4五桂△4二角▲6五桂となって先手好調。しかし結局△8二飛にも▲7七桂としなければ、先手陣には△2八角の隙が残っています。(▲3九金と我慢する手もありますが。)後手はやはり△4四角と先受けし、△6四歩からは持久戦模様。後手がまずまずといえると思います。

指し手②
▲3六歩    △5一金    ▲3七桂    △6二銀    ▲3五飛



▲3八銀は形ですが、かえって△2八角を気にする必要がありました。よって先に▲3五飛はどうでしょうか。この手は藤井二冠が指しています。

上図からの指し手
△8二飛    ▲8七歩    △8八角成  ▲同 銀    △3三桂
▲2五桂    △同 桂    ▲同 飛    △6六桂    ▲同 歩    △3四角
▲2一飛成  △7八角成



後手はやはり△8二飛と引きます(藤井vs永瀬戦)。対して▲2五飛が有力で、△2二銀▲8七歩は1局の将棋。
藤井二冠は単に▲8七歩としましたが、△8八角成▲同銀△3三桂で飛車を簡単には戻させません。さらに▲2五桂と跳ねたものの(たぶん疑問手)、上図まで進んだ局面は後手有利のようです。(ただし実戦は逆転勝ち。)

次回は(7)△5二玉を予定しています。
青野流で過去に最も多くの局数があり、そして最も難解な変化です。たぶん1回では終わりません。そしてまとまる気がしません。覚悟していきましょうw

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KKK 2021/8/14

土曜日に行います。


-楽しく指そう向かい飛車-

横歩取りの連載は難しいので、もっと読みやすい戦術講座もいいかなと思ったりします。イメージは中級者~初段の方向けぐらい。
副題はNHK講座のノリw

初手からの指し手
▲2六歩    △3四歩    ▲2五歩    △3三角    ▲7六歩    △4四歩
▲4八銀    △2二飛



昨今は初手から▲2六歩~▲2五歩と指されることも、結構多いのではないかと思います。相居飛車戦において、初手から▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角の進行は手が狭い意味があり、プロの対局で指されることはほとんどありません。(ただし、相手の手を狭くしている=形を決めさせているという面もある。)ただ、この手を咎めることはほぼ不可能であり、いざ指されてみると悩む、という方もいらっしゃるでしょう。
テーマの「向かい飛車」は、相手が飛車先を突き越してきたときに威力を発揮します。ある意味、初手から▲2六歩~▲2五歩のアンチ作戦と言えるかもしれません。
△4四歩と角道を遮断し、△2二飛と振れば向かい飛車が成立します。

上図からの指し手
▲6八玉    △4二銀    ▲7八玉    △4三銀
▲5六歩    △6二玉    ▲5八金右  △7二玉    ▲5七銀    △8二玉



ここまでは駒組みで特に難しい手はありませんが、△4三銀は保留し場合によっては△5三銀型にするような作戦もあります。また△3一銀型のまま、機を見て△2四歩から開戦するような指し方も一時期注目されました。今回はこの辺りの細かいことは省略して、わかりやすく△4三銀型を解説します。
先手の▲5七銀は穴熊を視野に入れた手で、実戦でも同一局面が現れる可能性は高いと思います。(試しに私もネットで指したら、同じ局面になりましたw)

上図からの指し手(1)
▲7七角    △9四歩    ▲9六歩    △7二銀    ▲8八玉



△9四歩はこの辺りが突き時。先手も▲9六歩と受けますが、受けずにすぐに穴熊を目指すのは振り飛車側から急戦を仕掛けられて危険です。(この後の進行を見ればわかります。)

上図からの指し手①
△3二金    ▲7八銀    △1四歩    ▲3六歩    △2四歩    ▲同 歩
△同 飛    ▲2五歩    △2三飛



△3二金はがっつり仕掛ける構え。△2四歩の仕掛けを狙っているので、▲7八銀と締まるのは自然です。
後手は一度△1四歩と突いておき、△2四歩▲同歩△同飛と飛車をぶつけます。向かい飛車は、相手の飛車先を飛車で受ける守備的な作戦でもあるのですが、こういう攻撃的な指し方もできるのがやはり面白いところです。▲2四同飛と取ると、△同角▲4一飛△2三飛で召し取ることができます。よって▲2五歩ですが、△2三飛と1つ引くのが「小倉流」と呼ばれる作戦です。

上図からの指し手
▲1六歩    △1三桂    ▲3七桂    △3五歩
▲2六飛    △3六歩    ▲同 飛    △2五桂    ▲2四歩    △同 飛
▲3三飛成  △同 金    ▲4五桂    △3四飛



△1三桂が、先に△1四歩としていた狙い。以下流れるように△2五桂と跳ねだすことに成功しました。
もし仮に△2二飛と引いていた場合は、△2五桂に▲4五桂の跳ね違いが成立します。△2三飛は3三を強化している意味だったのです。
そこで先手は▲2四歩~▲3三飛成と凄い切り返しを放ちますが、最後の△3四飛が冷静で後手が有利です。これは後手の成功例ではありますが、向かい飛車特有の面白い変化と思います。

指し手②
△5二金左



次は本美濃で指す指し方を紹介します。
一見は持久戦模様なので、先手は穴熊に組みたくなりますが…

上図からの指し手(a)
▲9八香    △6四歩    ▲9九玉    △2四歩    ▲同 歩    △同 飛
▲同 飛    △同 角    ▲2二飛    △2八飛    ▲2一飛成  △9五歩



後手は▲9九玉にやはり△2四歩と仕掛けを断行します。△2四歩▲同歩△同飛に▲2五歩は、△2二飛▲8八銀△3五歩▲1六歩△3四銀▲1七桂△1四歩▲2四歩△1五歩…が一例。相手の穴熊がまだバラバラのうちに楽しく戦うことができます。△3五歩~△3四銀も向かい飛車ではよく出てくる筋です。
本譜は交換して▲2二飛と打ち込んできましたが、△2八飛と打ち返して△9五歩とどんどん攻めていきます。端は△8五桂の筋などがあり弱いところです。
整然とした美濃囲いで捌いて戦うことができれば、振り飛車党にとっては望むべき展開でしょう。上図以下、▲同歩△9七歩▲同香△3二銀!▲同龍△5七角成(取れば△9八銀まで)となれば後手有利。

指し手(b)
▲7八銀    △6四歩    ▲8六歩    △7四歩    ▲3六歩    △7三桂
▲6六歩    △6三金



先手に▲7八銀と締まられると、さすがに攻めることは難しくなります。
後手は高美濃に組んでじっくり指す展開。腕力勝負です。

居飛車目線の話をちょっとすると、▲7八銀に代えて▲6八金寄とすれば穴熊の含みを残すことができます。これには、初段ぐらいまでなら、△5四銀▲6六銀△6四歩…などで急戦の含みを残す方が勝ちやすいと思います。△2四歩だけでなく、△4五歩、△6五歩、△6五銀などの手があります。
堅い本美濃をそのまま残して、ちょこちょこ動いていくのが実戦的ですね。

指し手(2)
▲3六歩    △5二金左  ▲7七角    △9二香    ▲8八玉    △9一玉
▲9八香    △8二銀    ▲9九玉    △7四歩    ▲8八銀    △7一金
▲7九金    △5一角    ▲6八金寄  △7三角    ▲4六歩    △3三桂



最後に相穴熊をご紹介します。
▲3六歩は▲3七桂を見せ、△2四歩を警戒している意味があります。これを見て後手は穴熊に切り替えました。
以下相穴熊になりますが、△5一角~△7三角と角を転回できるのが向かい飛車の強み。振り飛車で△3三桂と使えるのは気分よし。
以下はやはり力のぶつかり合いになります。定跡ではないので、玉を固めて力勝負したい人にはオススメです。

一口に向かい飛車といっても様々な形がありますが、向かい飛車独自の指し方というのは意外といろいろあるのだと、私も再認識しました。
大きな魅力を持つ振り飛車ですね。

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KKK 2021/8/7

土曜日に行います。


現代横歩取りは難しい。
ブログの記事をまとめていて、私はひしひしとそう感じています。この手もあの手も互角、という風に変化は多いのに、悪手を指すと一気に敗勢になることも珍しくありません。私も現在進行形で研究を深めているので、既に書き直したい変化もいくつか現れています。
何某に「横歩取りの奴は読み飛ばしてます」と言われる始末ですw

しかし、「難しい」ことは対局において、決してマイナスではありません。だって、対局相手にとっても「難しい」のだから。横歩取りの全ての変化を暗記、理解はできなくても、手筋をより多く学んでおくことで、応用できる局面は無数に存在しています。(それはバランス型全盛の現代将棋において、横歩取りの戦型のみに限らない。)

ぜひめげずに読んでみてください。

今回は(5)△4二玉の回ですが、これは△2二銀~△4二玉の変化と大体同じです。よって特に書くこともないはずだったのですが、漏れていた変化があったのでピックアップします。



上図からの指し手①
△2二銀    ▲3六歩    △4二玉    ▲3七桂    △5二金    ▲3八銀
△2六歩    ▲2八歩



△5二金とがっちり組んで、△2六歩▲2八歩まで利かして、先手からの速攻を絶対許さない姿勢。以前の変化は△8二飛と早く引いていましたが、かえって▲8四歩と抑えられた意味もありました。

上図からの指し手
△2三銀    ▲3五飛    △8二飛    ▲3三角成
△同 桂    ▲7七桂    △2七歩成  ▲同 歩    △2八角    ▲8三歩
△同 飛    ▲5六角    △7四歩    ▲8四歩    △同 飛    ▲8五飛
△同 飛    ▲同 桂    △2二歩



それでも先手が攻撃を仕掛ける順を本線とします。▲3三角成~▲7七桂は超が付くほど強気。ここでは▲8七歩と一旦攻めを諦める順も実戦例があり、△6二銀▲2五飛△4四歩▲2六飛△7四歩…のような感じでこれからの将棋です。先手はさらに1歩取ることができましたが、▲2八歩の形自体はつらい意味もあります。
本譜は△2七歩成~△2八角で、これが最善かどうかは判別不能。先手は当然飛車をぶつけて勝負。△2二歩でぎりぎりバランスが取れているかどうか、「難しい」。

指し手②
△8二飛
▲3六歩    △2六歩    ▲3七桂    △2七歩成  ▲4五桂    △8八角成
▲同 銀    △3七と    ▲8三歩    △同 飛    ▲6五角    △8二飛
▲5三桂成  △3三金    ▲8三歩



もう1つ漏れていた変化を。これは最近手にした羽生先生の著書「現代調の将棋の研究」で取り上げられていた変化だったのですが、完全に忘却していましたw
以前述べた通り、△8二飛~△2六歩は現在進行形で指されている変化の1つ。そこで▲8三歩と叩いていることが多いのですが、本では単に▲3七桂~▲4五桂とされていました。
△8八角成に▲同銀とすると、△3七と が厳しくなることは以前述べた通り。ただ△3七と では△2三角▲3五飛△5二金のような順も考えられ、難解です。
本譜は▲8三歩~▲6五角で別の将棋に突入。激しい戦いになり形勢不明です。

指し手③
△8二飛    ▲3六歩    △2六歩
▲3八銀    △4二玉    ▲3五飛    △2二銀    ▲3九金    △6二銀
▲8七歩    △8八角成  ▲同 銀    △4四角    ▲2五飛    △3三桂
▲2四飛    △8四飛



以前△8二飛~△2六歩に、先手が受けるのは利かされで「まぁ無いんじゃないの、知らんけど」ぐらいで流してしまいましたが、実は▲3八銀とした実戦例がありました。しかも指したのは藤井二冠!w 他の変化で△2六歩に▲3八銀や▲2八歩とすることはよくありますが、その機微はやはり難しく、経験が必要となるかもしれません。しかしながら、この辺りの感覚は前例に引っ張られる部分が大きく、結局どれも現れ得るのです(言い訳)。
本譜は▲3九金としたのが予定とは思いにくく、藤井二冠も想定を外れて手探りで指していたのではないかと推測します。△4四角からは先手の飛車が狭くなってしまったので、後手十分の形勢ではないかと思います。
ただ△2六歩に▲3八銀と受ける手自体は、まだ可能性があるのではないかという気もします。

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