土曜日に行います。
-定跡外の整合性担保-
今回のお話は相振り飛車の△4四角型について。
比較的マイナーな定跡なので、まずはどのような局面のことなのかを見てみましょう。
初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩 △1四歩 ▲1六歩 △5四歩
▲6六歩 △4四角 ▲7八飛 △2二飛 ▲2八銀 △2四歩
▲3六歩 △2五歩 ▲3七銀
この相振り△4四角型は奇異な形ながら有力な作戦です。
▲7八飛△2二飛と相振りが確定した後、先手には様々な駒組みが考えられます。ただ後手は△4二銀~△3三桂~2筋交換が実現すると、1筋の端攻めも残っており、良い意味で軽い形です。そうなると先手作戦負けに陥りやすいので、今回は矢倉での対抗が可能かどうかを検証します。矢倉にがっちり組めれば、△4四角型は負担になりそうです。
上図からの指し手
△3五歩 ▲同 歩 △同 角
▲4八玉 △2六歩 ▲同 歩 △同 角 ▲同 銀 △同 飛
矢倉に組んでじっくり指したい先手でしたが、後手の強襲が成立しました。まだ難しいところはありますが、後手やや良しの定跡です。
ただし、改めて調べると△3五歩▲同歩△同角には▲7四歩と突っ張って難解、というのがソフトの見解です。乱戦に持ち込めたという意味で、一応後手成功ということにしたいと思います。
しかしながら、石田流対策として考えたとき、解消しなければならない課題は残っています。それは△1四歩に先手が受けてくれない場合です。そのときは"△1五歩と伸ばして居飛車にする"というのが相場ですが、1つの作戦に振り飛車と居飛車の可能性があるのはハードルが高いかもしれません。
ただ1筋の挨拶を省略すると、先ほどの矢倉に対する強襲が成立しなくなります。(上図で▲1五角が王手飛車!)
では1筋を突かない場合、この△4四角型の作戦は使うことができないのでしょうか。
さて、ここからは自らの力で道を拓きますよ。
初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩 △5四歩 ▲6六歩 △4四角
▲7八飛 △2二飛 ▲2八銀 △2四歩 ▲3六歩 △2五歩
▲3七銀 △3三桂 ▲4六歩 △4二銀 ▲3八金 △7二金
▲6八銀
強襲が不成立のため、お互い駒組みに。先手の組み方はとりあえず妥当でしょう。
後手は△7二金で△6二玉、△8二銀、△7二銀、△6二銀なども考え得るものの、三間飛車に対して△7二金の方が上部に厚い意味があり、今回は本手とします。
上図からの指し手①
△6一玉 ▲6七銀 △8二銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲4八玉
△6二角 ▲5八金 △4四歩 ▲3九玉 △4三銀 ▲2八玉
後手は先手のように(矢倉にして)盛り上がりたいものの、先手が7筋交換をしてこなければ叶いません。そこで当たりにされそうな角を△6二角と引き、一旦△4四歩~△4三銀と整備する順が見えます。
ただ先手にゆっくり囲われると、いよいよ指し手が難しくなってきました。
上図からの指し手
△2一飛 ▲4七金左 △4二金 ▲1六歩 △1四歩 ▲8六歩
△8四歩 ▲7六銀 △8三銀 ▲7七角 △5二玉 ▲8八飛
△7四歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲7五歩 △8三銀 ▲6五歩
△2一飛~△4二金はしょうがないのでバランス型への移行。
△8四歩は銀冠を見せて「▲7四歩、来い!」という手ですが、そうはなりません。(ちなみに△8四歩は狙われるため、バランス型にして後手の玉を左辺に逃がせるようにしないと突けない。)△8四歩に▲7四歩△同歩▲同飛なら、△8三銀~△5二玉として△7三角の活用を見ることができるのですが…。
図まで進むと先手が十分。△7三角なら▲8五歩と合わせて攻めたとき当たりになりますし、△5三金~△4二玉のように組み換えようとすると▲5六歩~▲5五歩ぐらいで打開して良し。△4五歩と自分から攻める手もありますが、暴発気味で気が引けるところです。
指し手②
△6二銀 ▲6七銀 △6一玉 ▲4八玉 △7一玉 ▲5八金
△1四歩 ▲9六歩 △9四歩 ▲7四歩 △同 歩 ▲同 飛
△7三歩 ▲7八飛 △5三銀左
盛り上がれないのなら△6二銀は妥当。
玉を右に囲う場合、△7一玉としたら後手は攻めたいところです。しかし先手の矢倉の堅陣の前に、簡単に攻めに出ることはできません。
△5三銀左で4四の角が恐ろしく狭くなりましたが…
上図からの指し手
▲3九玉 △2一飛 ▲5六歩 △4二金 ▲4五歩 △2六歩
▲同 歩 △同 角 ▲同 銀 △同 飛 ▲2七歩 △2一飛
▲4七金左
▲3九玉~▲5六歩~▲4五歩は、後手の陣形を咎めに行く指し方。△4五同桂なら▲4六銀で桂を取ることができます。
しかし△2六歩から角銀交換に出るのが明るい手で、上図まで進むとソフトは互角の評価値。以前角換わりの記事でも同様の筋を取り上げましたが、ソフトは陣形の配置を重視し、後手の陣形の評価が高い(加えて先手の陣形の評価が低い)と思われます。以下は△3五歩~△4五桂と猛攻するか、一度△1五歩とするか。いずれにせよ、後手はこの展開を目指していいのかどうか、すぐには判断ができません。
また、先手が▲4五歩とせずじっくりした展開も変化が広く、現状では「判らない」というのが正直なところです。
指し手③
△6二銀 ▲6七銀 △5二玉 ▲4八玉 △2一飛 ▲5八金
△3二金 ▲3九玉 △6四歩 ▲4七金左 △6三銀 ▲2八玉
△1四歩 ▲1六歩 △1二香
最初からバランス型を目指すのはどうでしょうか。後手は金開きに構えます。
△3二金に対し▲5六銀は、△5五歩▲4五歩に△2六歩▲同歩△同角で先手が危険。
また△6四歩に▲7四歩は1局ですが、後で△7三桂と使われる可能性はあります。
△1四歩▲1六歩△1二香から△1一飛を見せておけば、ほぼ互角の将棋と思います。
結論:1筋を突かずに△4四角型が成立するかは不明。
後は人体実験だ!w