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男子はいつまでも中2病、がコンセプトの将棋ブログ。

KKK 2022/7/30

土曜日です。
リモートで行います。


将棋小話 -新次元タコ金-

タコ金とは、金をぐねぐねと上部に繰り出していく指し方のことで、最近は聞かない呼び名となっています。
ときに豊島九段vs大橋六段の王座戦挑戦者決定戦は、さすがに驚愕の将棋でした。



この図まではありがちな将棋で、△4三銀と上がれば雁木の定跡形です。後手を持つ大橋六段はオールラウンダーというか一風変わった将棋を好む印象ですが、まだ波乱の予感は全然感じないところでした。

上図からの指し手
△4三金    ▲8八銀    △7四歩    ▲7八玉    △5四金



△4三金としたのは珍しい手ですが結構有力という認識で、まだ「ほぉ、この大舞台でこれを持ってきますか」ぐらいの感じでした。
しかし継続手はまさかの△5四金!
銀ならたまにある手なのですが…(私は銀でも違和感が拭えていない)

上図からの指し手
▲6六歩    △7五歩    ▲同 歩    △6四金    ▲6七金    △7二飛



△5四金には▲3五歩から先手も切り合っていくのも有力で、第1感としてはそちらを考えたくなります。それは研究課題。
本譜は▲6六歩に△7五歩~△6四金と動いて、一応金の長所が発揮されました。
上図の局面に進んだ時、先手は7筋の数が足りていません。

上図からの指し手
▲3五歩    △同 歩    ▲3四歩    △2二角    ▲2四歩    △同 歩
▲同 飛    △2三歩    ▲2五飛    △7五金    ▲3五飛    △7六歩



先手もしょうがないので反撃。さすがの手順ですが、後手も△7六歩と抑えることができました。
後手の左辺は最低限の形で済ませ、右辺で主張を作る。右銀で攻めた形と比較すると、▲9五角が王手にならないという利点もあります。

とりあえずネット将棋で試してみよう、と思ってしまう作戦。
面白い。

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KKK 2022/3/12

土曜日に行います。
リモート研究会です。24の感想戦機能が使い切れない罠。


今回は昨今の雁木対策について纏めてみます。
前回のKKKで「雁木に苦戦している」という話を聞きましたが、相居飛車の将棋はどれも難易度が高い。少しずつトライアル&エラーで取り入れていけば良いでしょう。
以前も語ったことですが、雁木は基本的に後手の戦法として(または囲いの発展形として)、広く使われています。戦法成立のためのハードルの低さ(4手目に△4四歩と突けば大体できる)もありますが、当たり前のことながら、その優秀性が認められているからです。
そんなわけで、雁木対策も様々なものが考えられ、現在進行形で進歩しています。

先手(雁木を相手にする方)の作戦は大きく分けると、以下の3つに分類できます。
(1)矢倉系
(2)早繰り銀系
(3)腰掛銀系

また、後手(雁木をする方)にとっても2つのパターンがあります。
①初手から△3四歩~△4四歩として能動的に雁木を目指す
②相手の形を見て雁木にシフトする

(1)矢倉系



矢倉で対抗する将棋は、後手のパターン①で先手が矢倉を選択する場合、②で相矢倉を選ばず後手が雁木を選択する場合、どちらもあります。これは以前にも記事にしました。

▲4六角とする手が変わらず主流です。以前と異なるのは、角を出るタイミングがかなり早くなりました。
上図の局面で、後手が駒組みを進めるためには△6四歩としたいのですが、それには△5四歩~△4二角とする必要があります。後手に形を決めさせることができますね。

「それなら▲4六角とされる前に△6四歩を突いておけばいいのでは」というのが、一番素直な着想です。早繰り銀が強敵という認識ですが、対抗できそうな節もあります。今後、もしかすると後手にとって有力な手段となり得るかもしれません。

(2)早繰り銀系



これは後手のパターン①に対する作戦です。②に対しては現時点では後手が指せると思います。

早繰り銀系と書きましたが、実際は▲2六銀と出る形もよくあります。また左銀は▲7八銀と▲8八銀の両方有力で、これからの展開が変わります。
一番の注目所は、上図の形でしょうか。
上図から(2)-1△7四歩なら、▲3五歩と仕掛けていきます。変化が多いですが、一例として△同歩▲2六銀△3四銀▲3八飛という感じです。これは先手が指せそう。
しかし(2)-2△5二金の場合は、前述の▲3五歩△同歩▲2六銀△3四銀▲3八飛の変化だと、△4三金右でイマイチ。よって▲7八玉△7四歩としてから▲3五歩を決行し、△同歩▲2六銀△3四銀には▲5六歩と突きます。今度は▲6八角と角で銀交換しにいくのが狙いです。駒の捌きがスムーズですね。

(3)腰掛銀系



後手のパターン①では、先手の基本の囲いは左美濃。ただ②で角換わり拒否でもよく出現するので、その場合は▲6八銀+▲7八金型となります(上図)。

左美濃では△8五歩に対して▲7七角と受けない将棋も多く、どちらも有力という印象です。
後手は△6四歩型と△5四歩型がありますが、今はもっぱら△5四歩型。△6四歩型は右四間が強力と思われます。ただ後手がちゃんと指したとき、本当にまずいのかはよくわかりません。

上図から先手は(3)-1右四間にするか、(3)-2居飛車のまま右桂を活用し、後に▲4五歩の仕掛けを狙うのが普通です。
ただ、角換わり拒否型の雁木はソフトも得意にしているようですが(余談ながら、最近は将棋ソフトのことをAIと呼ぶことが多いですが、私はかなり違和感があります。たぶんテキトーなマスコミがそういう記事でAIと呼んだのが発端なのでしょうけど… AIって人工知能のことだからなー。)、(3)-3すぐに▲4五歩から角交換を目指す形を、ソフトは好んで指しています。(どの局面で▲4五歩と突くかは難しい。)
上図から▲4五歩なら△5三銀か△4五同歩ですが、人間的には取る方が普通だと思います。その場合は角交換して、4筋と2筋の歩を切っておくのが先手の狙いとなります。

主要な形だけ取り上げました。これだけで雁木に対して自信を持って対応するのは無理だと思いますが、参考にしていただければ幸いです。
特に(3)-3の展開は人間にはまだ見慣れない将棋だと思われるので、逆に新たに取っ付きやすいかもしれませんね。

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見てると指したくなる、そんな感じ

そんなに物欲が無い私ですが、ネットとかで何となく眺めていると、全然興味無かったものでも欲しくなってきますよね。
全然興味が無い戦型もたまに見かけると、指したくなるものです。このブログを読んで「指したくなりました!」とは言われたことがないw

今週末と来週末のKKKはお休みです。



KKK前回の振り返り。
そのときちょうど王将戦をやっていたので、私も同じ戦型を採用しました。後手の作戦は流行の構えで、急戦形でありながら柔軟な展開を視野に入れています。

上図からの指し手
▲6九玉    △4二銀    ▲5六歩    △4一玉    ▲6六歩



プロは(このタイミングで)▲6六歩とはほとんどしないですが、これで悪いわけではありません。ただ、プロがリアルタイムで指している将棋も、本当はしっかり勉強した方が良いとは思います。
この形が出ないのは、以下の理由があると思われます。
・後手に主導権(攻勢)を取られやすい
・後手の有力な作戦の幅が広い

上図からの指し手
△5四歩    ▲6七金右  △5二飛    ▲5七銀    △5五歩    ▲同 歩
△同 飛    ▲6八銀左



たくさん後手の作戦があることはお話しましたが、あまり解説しなかったこととして「矢倉中飛車」があります。その名の通り、矢倉戦法の中飛車です。ちょうど「矢倉流中飛車」の記事を書いていますが、名前は酷似しているのに全然違う戦法です。
この作戦は昔からあり、元々▲7七銀型に有力と言われていました。つまり中央に備えるため▲6八銀左とするのが定跡なのですが、手損になってしまいます。それでも8八の角の利きを活かすためにも、▲6八銀左の価値が高いのです。

上図からの指し手
△5一飛    ▲7九玉    △6二金    ▲4六銀    △5四銀    ▲3六歩



上図までの進行は一例です。後手は下段飛車にして銀を繰り出し、△6五歩や△5五銀の仕掛けを狙いたいところ。▲3六歩はそれが怖くないという手で、主張の強い手です。
▲3六歩では他にも①▲7五歩△6三銀、②▲2四歩△同歩▲同飛、③▲5六歩△6五歩▲5七銀上などの変化が考えられ、どれも互角の将棋です。

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IT系なのにテレワークとか無いんだけど

リモートでの研究会をしてみましたが、いかがだったでしょうか。
私の所感としては、対面と比較すると色々ラグ(無駄)がある気がしますが、けっこう悪くないとも思いました。ただ、自分で局面を戻したりするのも、(私自身にとってはともかく、)なんだかんだ大事なような気もします。

今週末はお休みとさせていただきます。

今回は、KKKで現れた局面の復習を取り上げます。小話(というより、研究垂れ流しみたいになってるけど)は余裕があるときに、また。



上図は矢倉の局面で、お互いガッチリ囲い合いを望んだところ。
この1手前で、△4三金右では△6四角の方が普通かもしれません。

上図からの指し手(1)
△7三銀    ▲3五歩    △同 歩    ▲同 角



△7三銀とするのはマイナーな手段です。▲3五歩は角で歩の交換をしながら、入城のための開門となる一石二鳥の手。

上図からの指し手①
△3四歩    ▲4六角    △6四角    ▲6七金右  △3一玉
▲7九玉    △8五歩    ▲8八玉    △2二玉



単純に△3四歩と打ってしまうと(あるいは△6四角のような手だと)▲4六角と引かれ、後手が作戦負け気味になります。お互い玉を矢倉城に収めた上図は、先手だけ3筋の歩を交換できている形。▲3六銀と形良く銀を使うことができます。

指し手②
△7五歩    ▲同 歩    △同 角    ▲6七金右  △6四角    ▲4六角



後手も△7五歩から同じように指すのが有力です。これは互角の戦いです。

指し手(2)
△6四角    ▲4六角    △7三銀    ▲6七金右  △3一玉    ▲7九玉
△8五歩    ▲8八玉    △2二玉



(1)△7三銀に代えて(2)△6四角とするのが一般的な指し手です。▲3五歩△同歩▲同角なら、△3六歩として後手優勢。
よって▲4六角とぶつけ、△7三銀とすると「脇システム」という戦法になります。ちなみに▲6八角などなら△7三銀は”無筋”な格好です。
上図は深くまで定跡化されている将棋。

指し手(3)
△4二角    ▲3五歩    △同 歩    ▲同 角    △4五歩



3筋交換に△4五歩とするのも覚えておきたい形。△5三銀~△4四銀右と盛り上がる構想です。上図は細かいことを言うと後手が微妙な手順ですが、昔は類型が沢山ある将棋でした。

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KKK 2022/1/22

土曜日に行います。

KKKもリモートとか取り入れようかな…


-相手を揺さぶれ!陽動振り飛車-

もしかしたら最近の若い子は、「陽動振り飛車とはなんぞ?」となるのかもしれない。それぐらい最近は話題に上がらない作戦なのですが、個人的にはかなり有力だと思っています。
陽動振り飛車とは、相居飛車の序盤で相手がそれに適した囲い(矢倉とか)にしてきたら、振り飛車にシフトするというものです。一般的には矢倉戦での後手番の作戦となります。

初手からの指し手
▲7六歩    △8四歩    ▲6八銀    △3四歩    ▲7七銀    △6二銀
▲2六歩    △4二銀    ▲2五歩    △3三角    ▲4八銀    △4四歩
▲7八金    △4三銀    ▲6九玉    △6四歩    ▲3六歩    △6三銀
▲7九角    △4二飛    ▲5六歩    △6二玉



△6二銀と上がれば普通は居飛車としたものです。最初は雁木模様で進め、△6三銀としてから△4二飛と飛車を振ります。飛車を振る位置は、この場合はどこでもOK。
▲5六歩は引き角の筋を通して緊張が走る局面ですが、堂々△6二玉と上がります。

上図からの指し手(1)
▲2四歩    △同 歩    ▲同 角    △2二飛    ▲3三角成  △2八飛成
▲4三馬    △2九龍    ▲3九金    △同 龍    ▲同 銀    △4九飛



部分的には△4三銀と浮いている局面で、▲2四歩~▲同角~▲3三角成は危ないと言われる筋。しかしイレギュラーな先手陣をとがめ、△4九飛と打った局面は後手よし。この仕掛けがどうしても怖い場合は、最初から向かい飛車にしておけば1局です。

指し手(2)
▲6八角    △7二玉    ▲7九玉    △5二金左  ▲5八金    △7四歩
▲6六歩    △9四歩    ▲9六歩    △8二玉    ▲8八玉    △7三桂
▲6七金右  △7二金



先手がじっくりと駒組みを進めると、後手も駒組みに入ります。△7四歩は早めに突くことで、先手の位取りを拒否する意味がありますが、危険なところでもあります。例えば△7三桂で△7二銀とすると、▲6五歩△同歩▲2四歩△同歩▲同角△2二飛▲2三歩(▲4六角の狙い)という手筋があります。
また、部分的には△6三銀を△7二銀と引いて美濃に組み直すというのは実戦例が多い指し方なのですが、△7二金で△7二銀は▲7五歩△同歩▲8六銀のように攻められる可能性があります。個人的にはわざわざ手損して美濃に組むより、普通に木村美濃にしてしまう方が良いと思います。
上図は△8五桂のタイミングを計っていれば後手が十分指せます。

指し手(3)
▲5七角    △7四歩    ▲8四角    △7三桂    ▲5七角    △3二金
▲6六歩    △4一飛    ▲5八金    △4五歩    ▲7九玉    △7二金



▲5七角は歩を取る手を見せていますが、△8五歩と逃げると将来の△8五桂が消えるのが不満です。よって歩は取らせてしまう指し方を解説します。
本譜は振り飛車というより右玉風味ですが、先手の手持ちの歩を簡単には活かさせない指し方です。他にも後手の指し方はありそうですが、先手が歩を回収している間に手を作るのは難しそうなので、本譜が無難と言えます。1局の将棋。

初手からの指し手
▲7六歩    △8四歩    ▲6八銀    △3四歩    ▲7七銀    △6二銀
▲2六歩    △7四歩    ▲2五歩    △3三角    ▲5六歩    △7三銀
▲7九角    △2二飛



陽動振り飛車の序盤は多岐にわたるので、全く別の手順を見てみます。
△7四歩はこのタイミングだと速攻策を見せた手で、▲2五歩には△3二金とするのが普通です(居角のまま攻めの形を作る構想)。△3三角とされると、先手は▲5六歩~▲7九角としたくなります。
しかしそこで△2二飛と転換するのが狙いの一手でした。

上図からの指し手
▲4八銀    △6四銀    ▲7八金    △5四歩    ▲4六角    △5五歩
▲5七銀    △5二飛    ▲5八飛    △7三桂    ▲6六歩    △8五桂



△2二飛のあと駒組みに移れば普通の(?)陽動振り飛車となりますが、後手はある狙いを秘めていました。△6四銀~△5四歩~△5五歩と5筋からガンガン攻める構想です。
上図まで進めば後手よし。先手はちゃんと対応すれば互角になりますが、面白い構想なので紹介しました。

初手からの指し手
▲2六歩    △3四歩    ▲2五歩    △3三角    ▲7六歩    △4二銀
▲4八銀    △9四歩    ▲9六歩    △8四歩    ▲3三角成  △同 銀
▲8八銀    △7二銀    ▲3六歩    △8三銀    ▲7七銀    △2二飛



初手から▲2六歩~▲2五歩と飛車先を決めてくる手が内心嫌だと思っている方は、それなりにいらっしゃるのではないかと思います。そんな方が明日から使える、角換わりからの陽動振り飛車を紹介します。
相手に角交換させるために△8四歩と突くのですが、その前に△9四歩▲9六歩を入れておくのがポイント。△7二銀までは完全に角換わりの序盤ですが、△8三銀~△2二飛で飛車を振ります。
初めて見た人はビックリしてくれるかもしれませんw
△2二飛には▲6五角が気になりますが、△7四銀▲4三角成△5二金右で角が死ぬので大丈夫。この変化のとき9筋の突き合いが入っていないと、▲5二同馬△同金▲8二金が意外と厄介な手になります。(本譜は△9三桂と活用して後手よし。)

上図からの指し手
▲3七桂    △7二金    ▲4六歩    △6二玉    ▲6八玉    △7四歩
▲7八玉    △7三桂    ▲4七銀    △7一玉    ▲4八金    △8二玉
▲2九飛    △5二金



▲3七桂は細心の注意を払った手で、▲6八玉とすると△7四歩▲4六歩△6二玉▲7八玉△7二玉のような変化を与えます。(この△7二玉+△7四歩型を活かせるかは判らないが。)▲3七桂に△7四歩なら、▲4五桂△4四銀▲5三桂不成△同銀▲5五角の強襲があります。△6二玉は考えられるものの、▲8二角に対策が必要です(最善を尽くせば互角以上になりそうな気はする)。
▲6八玉では▲7五歩と位を取る手もあり、△7一玉▲6八玉△8二玉▲3八金△5二金▲4七銀…いい勝負。
本譜もとりあえず囲いに玉を納めます。先手がどのような陣形を作るかはわかりませんが、後手は陣形作りがセンスの見せどころ。△5二金は次に△6四歩とすれば玉周りががっしりしますが、△6三金左とは上がりにくい(のちに角を打ち込まれそう)のが悩みの種。△5二金~△4四歩や、△4二銀~△5四歩などいろいろと考えられます。

陽動振り飛車は、まだまだビックリするような指し方がたくさん眠っていると思います。サプライズ大好き症候群に罹っている人(私含む)は、ぜひ考えてみてください。
いい反応をしてくれる人が私は大好きですw「Niceリアクション賞を贈呈します!」

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-矢倉vs雁木の攻防-

今週末はKKKをお休みさせていただきます。
ぜひ日曜のあわら市将棋大会にご参加ください。(仕事でフラフラのこた(仮を狩るチャンスですw)

雁木が△6三銀型にアレンジされて復活した当初、矢倉と雁木のマッチアップはプロでも課題となる将棋でした。しばらくして、先手(矢倉)側がより積極的に攻めることのできる将棋が模索されたこと、角換わり~相掛かりの将棋が主流になったことにより、矢倉vs雁木の将棋は姿を消すことになります。

しかし、最近ボチボチとこの将棋が復活傾向にあります。
しかも、雁木に対して敢えて矢倉を選ぶ、矢倉に対して敢えて雁木を選ぶという反する状況が混在しており、お互いの主張がぶつかるような面白い状態になっています。このまま「どちらを持っても指せる将棋」としてさらに局数が増えるのか、それとも「こちらの方が指せそうだ」となって消えるのかは、興味深いところです。

初手からの指し手
▲7六歩    △8四歩    ▲6八銀    △3四歩    ▲7七銀    △6二銀
▲2六歩    △4二銀    ▲2五歩    △3三角    ▲4八銀    △3二金
▲7八金    △4四歩    ▲7九角    △4三銀    ▲6九玉    △7四歩
▲3六歩    △5二金    ▲5六歩    △7三桂    ▲5八金    △6四歩



序盤で矢倉vs雁木の将棋に落ち着くまでには、様々な手順を経由する可能性があります。△5二金ぐらいまでで大体合流し、骨格が出来上がります。(次の△7三桂を先に指すかどうかぐらい。)
先手の▲5六歩~▲5八金は省略して早繰り銀や棒銀に出る作戦もありますが、序盤早々のわかれで▲5八金と上がる手順もあるので、一応上がるもののとして話を進めます。
また、先手には▲2四歩から角を交換する権利がありますが、これは基本的にはバランスが良い雁木側が得だと見られています。
△6四歩は分岐点。他には△5四歩や△8五歩、△4二角などが考えられます。

上図からの指し手(1)
▲3七銀    △5四歩



まずは▲3七銀から先手が足早に仕掛ける将棋を見ていきます。
雁木側は矢倉側の動きに乗じて、反撃を狙います。このときに△5四歩や△8五歩、△4二角、△6四歩の組み合わせによって、どういう反撃をするかが変わります。△6四歩~△5四歩はその準備ですが、これはむしろ珍しい組み合わせ。

上図からの指し手①
▲3五歩    △同 歩    ▲4六銀    △3六歩
▲2六飛    △5五歩    ▲同 銀    △5七歩



早繰り銀に対して、もし△5四歩型なら△5五歩▲同歩△4五歩から△5五角と捌いたり、△8五歩型なら△8六歩▲同歩△8五歩の継歩、△4二角型なら△6四角などが反撃の手段となります。
本譜は△6五桂を狙っており、△5七歩に金を逃げることができません(△1五角がある)。形勢自体はいい勝負です。

指し手②
▲6六歩    △8五歩    ▲6七金右  △4一玉    ▲3五歩    △同 歩
▲同 角    △8六歩    ▲同 銀    △4五歩    ▲7七銀    △6五歩



次に▲3五歩△同歩▲同角と歩交換する手を検討します(一旦▲6六歩~▲6七金右と自陣整備)。自然と矢倉城への開門もできるので、やってみたい手です。
しかしやはり仕掛けのその瞬間、後手は動く。ちなみに△4一玉で△6三銀としていると、▲3五同角に△4五歩が突けなくなって失敗します。
△6五歩とした上図までの進行は、後手がペースを握っているといえるでしょう。

指し手(2)
▲6六歩    △8五歩    ▲6七金右  △6三銀    ▲9六歩    △9四歩



というわけで、先手が血気盛んに攻めようとしても、かえって後手に攻められてしまうことがわかりました。では、じっくり指す順はどうでしょうか。
▲9六歩△9四歩の交換は、矢倉側が得になっているとみて先手が突くことが多いです。
上図から先手には①▲6八角、②▲3五歩、③▲4六角が考えられます。

上図からの指し手①
▲6八角    △4一玉    ▲7九玉    △5四歩    ▲3七銀    △4二角
▲3五歩    △同 歩    ▲同 角    △8一飛    ▲3六銀    △6五歩
▲同 歩    △同 桂



▲6八角は矢倉に組む手順としては自然な一手。しかし結局▲3七銀とするぐらいしか、指す手が無くなってきます。(代えて▲8八玉とか▲3七桂は指せるものの、△4二角~△8一飛~△3一玉~△2二玉~△1四歩とする間に結局▲2四歩と行くことになって、矢倉側が失敗するのが初期のパターンだった。)
後手は▲3六銀とコビンが開いた瞬間、△6五歩▲同歩△同桂と戦端を開きます。

上図からの指し手
▲6八銀    △6四角    ▲1八飛    △3四歩    ▲2六角    △8六歩
▲同 歩    △同 角    ▲8七歩    △6六歩    ▲同 金    △6八角成
▲同 玉    △8六歩    ▲同 歩    △5七銀



まずは銀をどこに逃げるかですが、▲6六銀は△8六歩▲同歩△同角が角成の先手になっているので後手指せる。
▲6八銀には桂損を恐れない△7五歩なども有力ですが、本譜のように強攻しても後手がいけそうです。上図は後手優勢。

指し手②
▲3五歩    △同 歩    ▲同 角



単に▲3五歩の歩交換を考えます。今までと何が違うのでしょうか。

上図からの指し手(a)
△8六歩    ▲同 銀    △6五歩    ▲5七銀    △6六歩    ▲同 銀
△6五歩    ▲7七銀右



後手はやはり仕掛けられたところで反発するのが常道です。△8六歩▲同銀△6五歩と反撃しますが、今度は▲5七銀と応援を送ることができます。△6五歩と位を抑えられるものの、▲7七銀右と引いた形が堅い陣形となりました。△8五歩に▲9七銀を用意して9筋の端も活きています。部分的にタイトル戦にも現れた変化で、以前はこれで先手が十分という認識だったのですが…

指し手(b)
△4二玉    ▲7九玉    △8一飛    ▲3七銀    △8六歩    ▲同 歩
△8五歩    ▲同 歩    △9五歩    ▲同 歩    △8五桂



△4二玉は私の実戦で指された手(局面全体では多少異なる)。相手は当時プロを連破するようなアマ強豪でしたので、研究があったのだと思われます。
普通雁木は△4一玉が基本で、△4二玉型ですと角を引けない、相手の角に当たりやすい、3筋からの攻めに当たりがきつい(しかも仕掛けられた直後のタイミング)など、デメリットが多く目につきます。しかし続いて△8一飛とすることで、下段飛車の利きを通すのが急所の形のようです。
私の実戦では△4五歩~△6五歩とされて攻め合いになり、対局中は互角かと思っていましたが、結局こちらが良い局面は最後まで現れませんでした。
本譜は継歩からの攻めで、のちに角道を通して後手十分。交換した歩を逆用されることが多く、3筋交換は現状先手がつまらないと考えています。

指し手③
▲4六角



▲4六角と出るのが最近よく指されている手です。一見相手の攻めを牽制しただけの手に見えますが、実は積極的な構想を秘めています。

上図からの指し手(a)
△8一飛    ▲7九玉    △4一玉    ▲5七銀    △5四歩    ▲5五歩



▲5七銀と上がった形は、いわゆる総矢倉。▲3七銀型と違って、必ず銀が遊ばないのは長所です。
△5四歩で△3一玉などの手は、▲5五歩△4五歩▲3七角△6五歩▲5六金が一例で、位を活かしながら指しまわすことになります。
本譜の▲5五歩はただの歩交換に見えて何気無いようですが、実は緊張が走る局面です。

上図からの指し手
△4五歩    ▲3七角    △5五歩    ▲4六歩    △5四銀右  ▲4五歩
△同 銀    ▲7五歩    △8四飛    ▲2六角    △4四歩    ▲3七桂
△3六銀    ▲4六銀



後手にとっては手に乗って指し良くできそうに見える局面、△4五歩は指してみたい手の1つです。他に△5五同歩▲同角△5四銀左と指すのは、▲3七角△4五銀▲3五歩△同歩▲4六銀で先手が指せそう。
本譜は力のこもった戦いが続きます。いい勝負。

指し手(b)
△4一玉    ▲7九玉    △5四歩    ▲5七銀    △4二角    ▲5五歩
△同 歩    ▲同 角    △5四銀右  ▲3七角    △3五歩    ▲同 歩
△3六歩    ▲2六角    △6五歩    ▲3四歩



△8一飛を△4二角に変更すると、5筋交換のときに△5四銀右と上がる変化が生じます。本当は▲5五歩の前に▲1六歩△1四歩の交換を入れたい(△4五銀などに▲2六飛と受けることができる)のですが、手抜かれる可能性もあります。▲1六歩△3三桂▲8八玉△8一飛▲2四歩△同歩▲同飛…が一例。
本譜で△5四銀右▲3七角に△4五銀と出られた場合は、▲5六銀と強く戦うことになりそうです。後手は角筋を逸らすことで△6五歩を実現しますが、総矢倉も堅くほぼ互角の戦い。

指し手(c)
△8一飛    ▲7九玉    △6二玉    ▲1六歩    △4五歩    ▲3七角
△5四銀左  ▲5七銀    △1四歩    ▲8八銀    △7二玉    ▲7七桂
△6二玉    ▲8九玉    △7二玉    ▲4六歩



最後に後手が右玉に構える指し方を紹介します。△6三銀型の雁木は右玉と互いにシフトできるので、相手の陣形に合わせて使い分けることができればベストです。
右玉に対しては▲1六歩が、△5四銀左~△4五銀を防いで必要になります。
▲5七銀に対し△6五歩と仕掛けるのは、▲同歩△同桂▲6四歩△7二銀▲6六銀右△7七桂成▲同桂と盛り上がって先手よし。よって既に右玉側に有効な指し手がなく、▲8八銀~▲7七桂~▲8九玉と組み替えることが可能です。これは菊水矢倉と呼ばれる囲いで、右玉に対して有力な形といわれています。(ちなみに以前は雁木にも菊水矢倉に構えることがあったが、現状では雁木側が十分に指せると思われている。)
右玉側は後手番ということで玉を動かして待機。例えば△8六歩と歩交換すると銀冠に組み替えられてしまいますし、△4一飛は▲8五桂△同桂▲8六歩と技を使われて先手やや有利。
しかし満を持して▲4六歩とされた局面は、既に先手の駒組み勝ちといえるでしょう。対右玉は最善を尽くすと矢倉側が指せると思いますが、危険も多く右玉側がやけに上手くいくパターンも多いです。

私見で現時点での結論を述べると、形勢互角ながら、後手の作戦としては雁木が成功していると見ます。
プロの将棋でも、雁木は後手番の作戦として確固たる地位を築いています。(対矢倉に関わらず。)今回は雁木全体の動向までは語りませんが、これからも要注目の戦型でしょう。

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-盤面全体で戦う-

すみませんが、今週末のKKKはお休みとさせていただきます。


矢倉△6三銀型後編。
今回は飛車先交換を保留し、▲4八銀とがっしり指す将棋を見ていきます。前回の横歩取り系と比較すれば、より矢倉的な将棋と言えるでしょう。

初手からの指し手
▲7六歩    △8四歩    ▲6八銀    △3四歩    ▲7七銀    △6二銀
▲2六歩    △7四歩    ▲2五歩    △3二金    ▲7八金    △6四歩
▲4八銀    △7三桂    ▲7九角    △4二銀    ▲3六歩    △6三銀
▲3七銀



△7三桂に▲7九角は1つのポイントで、△8五歩に▲6八角を用意しています。(△6五桂▲6六銀△8六歩を防ぐ。)
▲3六歩~▲3七銀は早いようですが、攻めを見せて相手陣を牽制する狙い。現在の主流です。(▲4八銀のまま指した実戦例もあるが…)

上図からの指し手(1)
△8五歩    ▲6八角    △4四歩    ▲5六歩    △4五歩



この後手の指し方は、先手の攻めを警戒してのものといえます。△8五歩と▲6八角の交換を入れることで後手からも攻めの形を作り、△4四歩で早繰り銀に対応します。
▲5六歩には△4五歩とさらに角道を通すのが新機軸の一着。

上図からの指し手①
▲2四歩    △同 歩    ▲同 角    △2三歩    ▲6八角    △4三銀
▲5八金    △6二金    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 角    △5二玉



△4五歩には▲4六歩と反発する手が見えますが、まずは無難に飛車先を交換する手を見ていきます。後手は既に右桂でカウンターする構えができているので、先手もリスクを取りたくはないのです。
△4三銀~△6二金とやはり後手はバランス型の陣形。▲2四歩~▲2四同角とすれば王手がかかりますが、△5二玉で一応大丈夫な形です。以下▲2三歩△4四角▲4六歩とさらに攻めかかった実戦例もあるものの、△5四銀右で少しやりすぎている感。
先手もじっくり駒組みを進めるのは1局で、それは後の△6五歩型を参照してください。

指し手②
▲4六歩    △5四銀    ▲4八飛    △4六歩    ▲同 銀    △8六歩
▲同 歩    △8五歩    ▲3五歩    △8六歩    ▲8八歩    △4三銀上
▲2四歩    △同 歩    ▲7五歩



反発する▲4六歩。後手の指し方を咎めようという心意気を感じます。△5四銀では△4六同歩も有力で、直近の羽生九段の著書に本手順として紹介されていますが、これは少し先手の主張を通しているような気がします。
▲4八飛は手の流れから言えば当然。これにソフトは△3三桂!という凄い手も示しますが、以下乱戦になるでしょう。また△4六歩に▲同角も考えられますが、△6二金▲6四角△4五歩とされ、先手がまとめづらくなります。本譜は継歩で後手が反撃し、△8五歩に▲同歩なら△同飛▲8六歩△2五飛で後手よし。
上図まで進展は一例ですが、盤面全体に火の手が上がることとなります。形勢不明。

指し手(2)
△5四歩



△5四歩は手広く構えて、どんとこいの姿勢。
まずは深浦九段vs藤井二冠戦をご覧いただきます。

上図からの指し手①
▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲2八飛
△8五歩    ▲6八角    △4四歩    ▲5六歩    △4三銀    ▲6九玉
△5二金    ▲3五歩    △同 歩    ▲4六銀    △3六歩    ▲2六飛



深浦九段は飛車先を交換しました。対して後手の藤井二冠は雁木の駒組みですが、これは右玉も視野に入れています。
本譜は▲3五歩と果敢に仕掛けましたが、▲7九玉や▲5八金も有力なところ。上図以下、実戦は△7五歩と強く反撃に出ました。他にも△8六歩~△8五歩という反撃筋や、△8一飛~△6二玉で機を待つ指し方も考えられます。
いずれも1局で、現段階でどれが勝るとは言えないところです。

指し手②
▲4六銀    △7二飛    ▲5六歩    △4四歩    ▲5八金    △5二金
▲3五歩    △7五歩    ▲同 歩    △4五歩    ▲同 銀    △3五歩
▲3四銀    △8五桂



▲4六銀は本筋の一着。対して△4四歩も有力ながら、△7二飛が面白い指し方です。本譜は石田五段vs佐々木勇気七段戦。
△5二金では△4三銀も考えられます。
▲3五歩に対し△7五歩がやはり急所のカウンター。先手の銀の攻めも迫力がありますが、後手の桂の攻めも早く難解な将棋。

指し手③
▲6九玉    △6五歩    ▲5六歩    △3三銀    ▲3五歩    △同 歩
▲同 角    △3一角    ▲7九玉    △8一飛    ▲5八金    △5二玉
▲4六銀    △6二金    ▲6六歩    △同 歩    ▲5五歩



▲6九玉は今年の名人戦、渡辺名人vs斎藤八段戦で出現。
これには△6五歩と位を取るのが、後手の狙いの1つとなっています。▲5六歩には手順に▲2四歩△同歩▲同角と交換する狙いがあるため、△3三銀で一旦阻止。そこで名人戦では▲3五歩△同歩▲同角とジャブを放ちましたが、代えて▲4六銀△3一角▲3五歩△同歩▲同銀△6四角▲4六角と激しい戦いに突入する順も考えられます。後手はやはり中住まいにしますが、先手も囲いを整えてから▲6六歩~▲5五歩と仕掛けていきました。
いい勝負ですが、個人的には先手持ち。

いろいろと見てきましたが、変化が広く、未解決の局面がほとんどです。ただ、後手とすれば(先手の動きに対して)攻め合いに持ち込めるという点で、積極性が買われているといえます。

ちなみに矢倉戦法の現在地点は、持久戦系でも後手に有力な形が多く、先手がやや苦戦している印象を受けます。(2021/6/14時点のこた(仮の見解、新たな手の出現ですぐ変わる可能性もある。)
以前の▲4六銀戦法1強時代に比べると苦労が多いですが、バリエーションが多いというのは楽しいことでもありますね。

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-矢倉戦法のバランス化-

今週末のKKKは、お休みとさせていただきます。


今回は最新矢倉のお話(前編)をお贈りいたします。

さて、昨今の特に相居飛車戦において、陣形全体のバランスが重視されていることを述べるのは、こんな場末のブログを好んでご覧の方には釈迦に説法でしょう。ただ矢倉戦法においては、他の戦法と比べてすぐの角交換になりにくい意味もあって、バランス化の波は緩やかなものでした。

そんな中、最近流行を見せつつある作戦△6三銀型を取り上げたいと思います。名人戦第4局で採用され、藤井二冠も直近で後手番を持って2局採用しています。
最初にお断りしておくと、まだこの作戦は決まった定跡が確立していません。各々の個性が現れるので、手順は一例だと思ってください。



この図は▲2六歩△6四歩▲2五歩と進んだところですが、△6四歩で△4二銀と上がり、▲2五歩に対して△3三銀と受けるのは以前の主流です。以下は△6三銀型の作戦を取る場合、米長流急戦矢倉になるのが相場でした。(作戦としては他にもあるが。)
また△3三角で受け、雁木にするのも最近多い作戦です。矢倉vs雁木の将棋も割とホットな戦型ですが、今回は割愛します。

上図からの指し手(1)
△3二金    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △6三銀



本譜は2筋の受けを△3二金だけに留め、飛車先を換えさせる権利を与えます。新しい局面の捉え方が生まれ、最近になって登場が増えている形。
後手の作戦にどういう主張があるかというと、これはけっこう難しい。敢えて解説を付けるとすると、1.角道を通したまま攻める形を作りやすい、2.バランスの良い陣形を目指している、という感じでしょうか。
まず先手が▲2四歩を決行する形を考えてみます。横歩取りを狙って、後手の指し方を咎めにいっているという感じ。ただし(2)△3二金▲4八銀…の進行もよく指されています。引き角にしてより矢倉的な指し方です。これは後編で。
横歩取りが本手順ですが、先に引き飛車から持久戦を目指すとどうなるのか見てみましょう。

上図からの指し手①
▲2八飛    △2三歩    ▲4八銀    △4二銀    ▲5八金    △5四歩
▲5六歩    △7三桂    ▲6六歩    △4一玉    ▲6九玉    △5二金
▲6七金右  △8五歩    ▲3六歩


上図まで進んで、後手の陣形は昔からある急戦の形に収まりました。1局の将棋ですが、後手が△6五歩から攻める権利を握っています。こういう形は、最近は後手に主導権があると見られています。
また、△5二金で△5二飛▲6七金右△6二金と矢倉中飛車にするのも有力。以下▲6八銀と引くのが定跡の教える形ですが、一度上がった銀ですからちょっと抵抗がありますね。

指し手②
▲3四飛    △3三角    ▲3五飛    △2四歩    ▲3六飛
△4四角



横歩を取られたときの対処は2通り。②▲3四飛に△3三角か、③▲3四飛に△4四角です。先手の角道が通っていない以上、▲3四飛にすぐの厳しい狙いはありませんが、後手も飛車をいじめなければ主張が作れません。
△3三角は直接的に飛車を帰さないという手ですが、ここからの動きは面白い。▲3五飛と1つ引くと、△2四歩でやはり2筋には戻させない。▲3六飛ともう1つ引けば、やはり△4四角で戻させない。
飛車を巡る動きが面白いですが、ここからはまだ未知数の将棋と言えるでしょう。とりあえず先手は▲4六歩と角を追う手を見せますが、以下△5四銀か△2二銀が有力。△2二銀なら▲4八銀△4二玉▲4五歩△3三角▲2六飛△5四銀▲3六歩△4五銀▲3五歩…というのが実戦例のある進行です。

指し手③
▲3四飛    △4四角    ▲2四飛    △2二銀    ▲2八飛    △7三桂
▲4六歩    △3三桂    ▲5八金    △5四歩



▲3四飛に△4四角もあります。以下スムーズに▲2八飛まで戻ることができますが、後手は両桂を活用してこれまた面白い形。後手からは△2六歩と垂らす手が含みにあります。

この前の叡王戦、行方九段vs藤井二冠戦で、藤井二冠がこの△4四角型を採用しました。途中の手順は違いますが、下の図のように進展しています。


後手は中住まいにして、バランスの取れた陣形。上半分だけ見たらとても矢倉戦法からの派生とは思えないでしょう。

TUDUKU。

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雀かわいい

今週末はKKKをお休みします。
日曜は気合を入れて小松に乗り込みますw

さて、矢倉では▲7七銀から組むのが主流になった関係で、早々に▲2六歩~▲2五歩を決めるのが現在の環境です。
しかし、これは以前の飛車先不突の定跡に齟齬が生じる可能性があるということ。もっと精査が必要だと感じているのですが、誰も彼も意外と掘り返していません。目指せパイオニア。

というわけで今回は”スズメ刺し”。
飛車先を伸ばす”あらまし”を述べるのも しちめんどくさい 長いので、これはすっ飛ばしますw



上の図は△9四歩と突いたところで、これがスズメ刺しの第一歩。先手が持久戦を目指せば、割と現れやすい局面だと思います。

▲6七金右△9五歩▲3七銀△7三桂



後手が着々と狙いの形を目指していますが、先手としては▲9六歩と受けておくのも有力。しかしこれは別の将棋になるので、今回は割愛します。ただ「矢倉の端歩は受けるな」が意外と浸透しているのか、8割ぐらいは受けないような気がします。
後手は△6四角で先手の攻めを牽制していない。まずは攻めてみたくなるところ。
(1)▲3五歩△同歩▲同角△9三香▲7九玉△9二飛


▲3五歩からの歩交換は手順に入城するルートを作って、効率の良い手です。△9三香+△9二香が”スズメ刺し”と呼ばれる作戦で、今は全くといっていいほど指されていないにも関わらず、知名度はかなり高いと思われます。

①▲8六銀△8五歩▲7七銀△9六歩▲同歩△同香▲同香△同飛▲9七歩△9一飛



①▲8六銀は形ですが、これは△8五歩で追い払ってOK。以下進んで普通に香交換が確定する。▲9七歩でもし▲9七香なら、△同角成で食い破って後手が有利。歩に対して突っ込むのは雑なので引き上げますが、もちろん後手充分です。

②▲8八玉△8五桂▲8六銀△9六歩▲同歩△9七歩▲同桂△同桂成▲同香△8五桂▲8九桂△9七桂成▲同銀△9四香打


②▲8八玉には△8五桂から攻めを開始します。この作戦の本懐と言えるでしょう。執拗に攻め続けて後手指せる。

③▲8八銀△8五桂▲6八角△9七桂成▲同銀△9六歩▲8八銀△9七歩成▲同香△同香成▲同桂△9六歩▲9八歩△9七歩成▲同歩△9三香▲9九香△8五桂▲8九桂△9七桂成


③▲8八銀はがっちり受け止めに行ったようですが、後手は気にせず攻める。今度は△9七桂成から行くのが急所。△9七歩成▲同香△同香成△同桂に△同角成としてしまうと、▲6八角の利きを生かして▲9五香でも▲9三歩でも先手良しになります。逆に△同桂で△同銀だったなら、△同角成が王手で後手良し。というわけで必然の手順になりますが、結論は千日手です。

今度は(1)▲3五歩とせず、(2)▲6八角から囲う手を見てみます。
(2)▲6八角△9三香▲7九玉△9二飛



①▲8八銀△4三金右


①▲8八銀に△8五桂から攻めようとするのは、今度は▲8六歩で無理筋。後手は壁銀を強いたことに満足し、持久戦に切り替えます。1局ですが後手成功と言って差し支えないでしょう。

②▲8八玉△8五桂▲8六銀△9七桂成▲同銀△9六歩▲8六銀△8五歩▲8四桂△9一飛▲4六角



②▲8八玉にはやはり囲っておくのが有力で1局ですが、これまで同様に攻めるとどうなるでしょうか。△9六歩で△8五歩はたまに出てくる筋ですが、▲7九玉△9六歩▲8八銀でどうか。△9六歩に▲同銀は、△同香▲同香△同飛▲9九香△9七歩▲同香△同角成▲同桂△7五歩…となって、これも昔からある筋になります。さて、▲8六銀に△8五歩で決まったようですが、▲8四桂の切り返しがありました。上図まで進むと先手優勢で、△6四歩と受けると角の利きが止まって▲8五銀と取られてしまいます。▲8四桂を好タイミングで打たれるとスズメ刺し失敗図になるので、気を付ける必要があります。

スズメ刺しは「攻めやすい」&「相手が研究していない」で、アマチュアならかなり勝ちやすい戦法だと思います。最善で来られても別に不利なわけでもない(相手の形に対して、スズメ刺しを諦める柔軟性は求められる)ので、レパートリーに加えておくといいかもしれませんね。

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傲慢と横暴のハーフ&ハーフ

今週のKKKですが、勝手ながらお休みさせていただきます。
労働状況的に、免疫低下してそうな気がするので。。。
他人への労りは大事にしたいと思う1週間でした。(なんのことやら)


将棋小話 -矢倉△5四銀型-

自粛の日々は、ぜひ存分に将棋の研究をお楽しみください。
さて、今回のテーマは矢倉です。矢倉は今、様々な形が指されていると前に申し上げましたが、全てに触れようとすると話が空中分解しそうですw 現在一番のメインとなっているのは、先後とも米長流の急戦矢倉でしょうか。しかしながら、ともかく沢山の形が指されており、本当は取り上げたい将棋が尽きません。
その中で今回は、昨年末ぐらいから新しく指され始めた、腰掛銀(△5四銀)の矢倉を取り上げたいと思います。

まず流行形の前提として、この形は先手が持久戦型、つまりは▲6六歩型のときに目指すのが基本になっています。ただし、この辺りの話はまた最後に触れたいのですが、これはあくまで現時点での前提です。もう1つ抑えておくと、▲6六歩型とは以前に指されていた5手目▲6六歩のことを言っているわけではありません。序盤の駆け引きはここでは省略します。



後手は今、腰掛銀に構えたところです。まだ右四間からの急戦と、持久戦を天秤にかけている状態です。要するに先手はどちらにも対応しなければならないので、▲7九角や▲6八銀などと囲いを決めることができません。
よってここから、▲9六歩△1四歩▲3七銀と進みます。



囲えないなら右銀を繰り出し、先に攻めの形を作るのは自然な構想です。対して、後手の指し手が面白い。(というか第1感は変。私は未だに違和感があるw)最初に掘り当てたのは誰なのだろう。

△4四歩▲2六銀△4五歩▲3五歩△3一玉



先手の右銀に対抗するため、後手は△4四歩と応じます。ならばと先手は▲2六銀ですが、ここで△4五歩の二段突き!さらに▲3五歩には△3一玉!
もし▲3四歩なら、△同銀で自動的に角道が通る算段です。そうすれば(何故か)攻めれる形になっています。

形勢は難しく、同じような将棋で少しずつ陣形を変えたり、全く違う展開に進んだりしています。この端を突き合うのはNHK杯戦の行方九段vs深浦九段戦で指されました。

王将戦の決着局では、また非常に難解な展開となりました。



▲7九角+▲3七桂と構えたのが工夫でしょう。この形に対しては当初の構想通り右四間にします。以下、△6二飛▲5七角△1四歩▲6九玉△9四歩▲9六歩△6一飛▲6八銀と虚虚実実の駆け引きが繰り広げられます。



以下△4二銀で攻めを目論みますが▲4六角でそれを牽制。△4四歩で追い払おうとすれば、▲2四歩△同歩▲5五歩。そして△4五歩▲2四角△5五銀▲4二角成と大味な将棋になりました。
正直に言えば、この序盤の展開は難しすぎて、まだ私には解析ができていません。

どちらかと言うと私は▲3七銀型の方が自然かな、と思うので(実際、プロでもほとんど▲3七銀型を選んでいる。)、今回も少しだけこた(仮が考えていることを出してみます。(盲信注意!w)



▲7八金を保留して組んでいるのが違いです。
以下△7四歩なら、▲3七銀△5四銀▲4六銀と組みます。



後手にはここで①△4二銀、②△4四歩、③△4四銀などが考えられますが、一足先に▲4六銀型を作ることができました。
△7四歩に代え△5四銀なら、▲3七銀△4四歩▲6八玉と早囲いを目指します。


△4四歩と止めた瞬間なので、早囲いを咎めることは困難でしょう。今度△4五歩なら後々▲4六歩~▲4八飛と位を直撃できます。

さて、私は最初にこの作戦の前提は、先手の▲6六歩型だと述べました。理由は6筋を争点にする構想だからです。しかし実は直近で、▲6六歩と突いていない形に対しても△5四銀と組んだ将棋が指されているのです。これは矢倉の腰掛銀という形自体に対する、新たなチャレンジかもしれません。

そもそも腰掛銀の矢倉というのは、長きに亘って指されなくなっていた戦法でした。右四間を除外すれば、それこそ昔の総矢倉vs銀矢倉のような形まで遡ってしまいます。

だから、もしかすれば大きな鉱脈が眠っている領域かもしれません。これから大きく流行する戦法に成り得る…かも?

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