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男子はいつまでも中2病、がコンセプトの将棋ブログ。

KTF 相掛かり▲9六歩 No.7

今週末のKKKはお休みとさせていただきます。


初手からの指し手
▲2六歩    △8四歩    ▲2五歩    △8五歩    ▲7八金    △3二金
▲3八銀    △7二銀    ▲9六歩    △4二玉



前回は▲9六歩と突いたテーマ図で、△3四歩とする作戦を見ていきました。今回は△4二玉とした上図が基本図となります。
△4二玉はプロ間ではそれほど多く指されていませんが、その実かなり有力。個人的には、先手を持ってなにかしら得するのは無理では無いかと捉えています。

上図からの指し手①
▲3六歩    △3四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △8六歩
▲同 歩    △同 飛    ▲8七歩    △8二飛



基本図で▲5八玉や▲6八玉なら無難で、テーマ図から△3四歩の将棋と合流する可能性が高い。これは後で少し触れます。
形の違いを出すなら▲3六歩が考えられます。ちなみに▲4六歩は割愛しますが、これは先手イマイチです。
▲3六歩には▲3五歩と突かれる前に△3四歩と突き、お互い飛車先交換。上図となる局面で△8二飛と引くのが前回との違いです。

上図からの指し手①-1
▲3七桂    △2三歩    ▲2九飛    △8三銀    ▲7六歩    △7四銀



▲3七桂は手損なしで▲2九飛と引く準備。これが成立すれば△4二玉を一応は咎めたと言えるでしょう。
△2三歩には▲3四飛も考えられますが、これは後で考えます。
後手は棒銀を採用します。先手が中段飛車の横利きで受けられなくなったことに着目しています。

上図からの指し手①-1-1
▲2二角成  △同 銀    ▲7七桂    △6四歩    ▲8八銀    △6三銀
▲8六歩    △同 飛    ▲8五角    △7四歩    ▲8七銀    △同飛成
▲同 金    △8四歩



▲2二角成~▲7七桂は最も自然な受け方。
後手は△6四歩として銀の立て直しを図ります。ここで▲4六歩は、△6三銀▲4八金△7四歩とされて△7五歩を狙われます(▲6六角と打てば難しいようだが、人間的には躊躇われるところ)。また▲6八銀として▲6六歩~▲6七銀で受けようとするのは、△3五歩が早い▲3七桂型を咎めた一着。以下▲2六飛△5四角▲2七銀△7六角は後手指せます。(最後の△7六角では△8六歩という好手もあるようだ)
よって▲8八銀から銀冠を目指すのが、人間的には一番自然な一手。しかし▲8六歩に△同飛が成立します。▲8五歩は△8九角が厳しい。また▲8七銀で、▲8七歩と打つのも、△8五飛▲同桂△7二銀で後手の指し手が難しくなります。
本譜も上図まで進み、後手やや良し。

指し手①-1-2
▲7七桂    △6四歩    ▲6八銀    △6三銀    ▲6六歩    △同 角
▲5八金



角交換せずに▲7七桂が勝りそう。しかし△7五歩を防ごうと思うと、▲6六歩と1歩犠牲にすることになりそうです。
これはこれでいい勝負。しかし先手番で歩損するのが納得できない方もいるでしょう。私もまったく指す気は起きない。

指し手①-2
▲5八玉    △2三歩    ▲3四飛    △3三金    ▲3五飛    △2四金
▲7五飛    △6四歩    ▲9五歩    △6三銀    ▲7六飛



横歩を取る手を考えてみます。形的に▲5八玉にしましたが、そんなに違いはありません。
△2三歩に先手は横歩を取り、後手は△3三金~△2四金と飛車を圧迫。▲3六歩型ですと飛車を2筋に戻すことができません。
上図までは一例。▲8六飛とすれば△8五歩と打たせることはできますが、歩越飛車はやはり負担。後手にも主張がある局面といえます。

指し手①-3
▲3七銀    △2三歩    ▲2六飛    △4四角    ▲2八飛    △8三銀
▲7六歩    △8四銀    ▲4四角    △同 歩    ▲5六角



アンチ△4二玉型作戦として、早繰り銀が考えられます。以前▲6八玉型に対して後手の早繰り銀が有効な理由を解説しました。
後手は棒銀にして、一足先に突破を狙います。対して▲5六角と攻防の角を打って対抗したのが、2021年の藤井vs渡辺の棋聖戦。現藤井七冠が繰り出した△4二玉対策でもあり、かなり有力と考えられます。
しかしながら流石にこれぐらいでは先手良しとはいかず、上図はいい勝負でしょう。

指し手②
▲6八玉    △3四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △8六歩
▲同 歩    △同 飛    ▲8七歩    △8四飛    ▲2八飛    △2三歩
▲7六歩    △7四歩    ▲4六歩    △7三桂



△4二玉に▲6八玉は無難です。お互い飛車先交換をした後、先ほどの▲3六歩型では▲8七歩に△8二飛と引きました。しかし今回△8二飛は▲1六歩△1四歩(他の手だと▲3四飛と取られる。理由は割愛。)▲7六歩に△8三銀とはしづらく、他の手だと▲2八飛~▲2七銀で逆に棒銀にされる変化を与えます。
△4二玉に▲5八玉としていたなら、▲2八飛と引かず機を見て横歩を奪う感じになるでしょう。
結局▲6八玉にしろ▲5八玉にしろ△8四飛となる公算が高く、上図は△3四歩型と合流する形です。ただし先手が▲6八玉型に決めてしまっているのがネックで、(△3四歩型に▲6八玉とする将棋もあるのですが)手が狭くなるのは気になります。

テーマ図から△4二玉の将棋は、△8二飛と引いてからの変化を深く研究しつつ、△3四歩の将棋と比較した上で、どの変化を許容するかなどを考えることとなりそうです。
かなりマニアックだ。

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KKK 2023/6/24

土曜日に行います。
来られる方は前日までにご一報ください。


- KTF 相掛かり▲9六歩 No.6 -

久しぶりの相掛かり連載。6回目にしてようやく本番に入るようなところがあります。

初手からの指し手
▲2六歩    △8四歩    ▲2五歩    △8五歩    ▲7八金    △3二金
▲3八銀    △7二銀    ▲9六歩



上図が基本図でした。これまでは後手がここでマイナーな指し手を選び、先手がどう対応するかを考えてきました。
今回はいよいよメジャーな指し方を見ていくわけですが、テーマとなるのは△3四歩と突く手で、後手にとって一番無難な指し方と私は考えています。ただ、個人的には先手持ちかなと思っていて、後手を持って唯一指さない作戦でもある。

まず、基本図から△8六歩と単に飛車先交換する手を考え、△3四歩と比較します。

上図からの指し手①
△8六歩    ▲同 歩    △同 飛    ▲8七歩    △8四飛    ▲7六歩



▲7六歩で▲4六歩と突くのは、基本図から△3四歩と合流します。

上図からの指し手①-1
△7四飛    ▲7七金    △5二玉    ▲6八玉    △8四飛    ▲8六歩
△3四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲2八飛
△7四歩    ▲4六歩    △7三桂    ▲8七金



▲7六歩に△7四飛は縦歩取りという指し方。対して▲2六飛と受ける形もありますが、相掛かりでは▲7七金とするのが主流で、後手にとっても想定しているところです。つまり△8四飛と戻り、▲7七金の形が悪いという主張です。(▲7八金なら△7四飛と戻って千日手)
しかし▲8六歩と突くのが新しい指し手。▲8七金と金冠を狙っており、良い形として既に広く認知されています。ただ▲4六歩で▲8七金は△7三銀と変化され、▲5八金△6四銀▲6六歩△7五歩▲6七金…のような変化となる可能性があります。それなら先に▲4六歩の方がいい可能性が高い。
形勢自体は難しい。縦歩取りは▲5八玉型の方が有効なところがありますが、▲6八玉型の似た形もまた取り上げるかもしれません。

指し手①-2
△3四歩    ▲6八玉    △5二玉    ▲3六歩    △9四歩    ▲4六歩



▲6八玉で▲2四歩と交換するのは、やはり基本図から△3四歩と合流します。ここはポイントで、先手はここで手を選択できる権利があります。(形勢をリードできるかは別問題だが。)
つまり基本図で△3四歩の方が先手の手が狭く、△8六歩が指されない理由と言えるでしょう。
先手はすぐに飛車先を交換せず、例えば手順に▲2九飛と引ければ得をします。しかし▲4六歩で▲3七桂は△3五歩が気になり、▲2六飛△3四飛▲3五歩△同飛▲3六歩△3四飛▲4六歩△9五歩のような変化を与えます。これは先手不満か。

上図からの指し手①-2-1
△7四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △7五歩    ▲同 歩



△7四歩と突いてきた場合、先手は横歩を狙って▲2四歩から飛車先を交換します。後手は△7五歩と突き捨てれば一応いい勝負ですが、手順に飛車先を切られたのが不満と見られています。今は後手が選ばない変化。

指し手①-2-2
△8六歩    ▲2二角成  △同 銀    ▲6六角    △8二飛    ▲8六歩
△同 飛    ▲8八銀



ということで逆に△8六歩から動きます。▲同歩と取る手も有力ですが、△同飛▲4七銀△7六飛▲8七金△7四飛▲5八金△8八角成▲同銀△7八角と切り込む手があり、先手危険な感じがします。
本譜は飛車を押さえ込むような感覚で、これも定跡化された形。いい勝負です。

結論として、基本図で△8六歩自体は有力。本講座は▲9六歩型相掛かりですが、代えて▲5八玉型相掛かりではよく指されています(△7四飛などが有力になりやすい)。しかし基本図で△3四歩より勝る変化が出てくるかどうか。

基本図からの指し手②
△3四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △8六歩    ▲同 歩
△同 飛    ▲8七歩    △8四飛    ▲2八飛    △2三歩



基本図で△3四歩には、上図までが妥当な進行。お互い飛車先を切り、先手が引き飛車、後手が浮き飛車となります。先手はこの形の差を活かすのが▲9六歩と突いたときからの予定なわけですが、後手も飛車先を早く切らせたことで手順に▲2四歩とされる変化にされにくくなっています。これが最初に無難と言った理由です。

上図からの指し手
▲4六歩    △4二玉    ▲4七銀    △7四歩    ▲7六歩    △7三桂



▲4六歩では、▲3六歩や▲1六歩とする手も有力です。(▲7六歩もよく指されているが、これは他の手でも合流する。)
△4二玉では△5二玉もありますが、これは基本図から△5二玉の方が手が広いため、前提として△4二玉とするつもりで指しています。ただ△6四歩と腰掛銀を目指すのも考えられます。
上図まで進み、多くの実戦例がある局面。

一旦序盤の分かれを解説し、中盤の戦いは改めて解説する方針です。これは相掛かりが序盤に関わらずいろいろな形に派生・合流するからです。
まずは煩雑とした相掛かりの序盤の流れを見ていただき、「なるほど!」と言っていただけるような話ができていれば嬉しいですね。

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KTF 相掛かり▲9六歩 No.5

来週末のKKKはお休みとさせていただきます。
明日は行いますよ~


前回の△5二金と同じく、基本図から△4二銀という手も、△6二銀型ならたまにある手です。



上図からの指し手①
▲7六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛    ▲6八玉    △8四飛
▲8七歩    △7四飛    ▲7七金    △3四歩    ▲3六歩



△4二銀も基本的には雁木狙いなので、▲7六歩で防ぐのが第1感。しかしこの手を狙いに、△7四飛でタテ歩取りの構想があります。▲7七金とさせて△3四歩と角道を開けておきます。
▲3六歩で▲2四歩とするのは、△同歩▲同飛△3五歩と飛車をぶつけられ、後手はひねり飛車で戦います。これは形勢うんぬんはともかく、少し先手不満に思います。

上図からの指し手
△4四歩    ▲5八金    △4三銀    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛
△2三歩    ▲2八飛    △8四飛    ▲4六歩    △7四歩    ▲8六歩
△7三桂    ▲8七金    △8一飛



△4四歩では△3三銀と飛車先交換を拒否してしまうのも有力。ただ▲3七銀△8四飛▲4六銀△9四歩▲5八金…ぐらいで、後で積極的に攻められて受け身になりそうではあります。
よって当初の狙いの雁木に組み、作戦的には後手十分、と言いたいところですが、▲8六歩~▲8七金の"金冠"が現代的な駒組み。ソフトも評価する形で、タテ歩取りに対してはスムーズに組めるため、よく採用されています。
▲4五歩から▲6六角を狙われるのを避けて△8一飛と引いた局面は、お互いに言い分がある将棋です。

指し手②
▲6八玉    △4四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △4三銀
▲2三歩    △3一角



一見すると▲6八玉は策が無いようですが、スキのない引き締め方。
△4四歩には▲2四歩から横歩を狙われるものの、△4三銀と守ることができます。ここで▲2八飛とゆっくり指すと、後手に代償なしに雁木に組まれたことになり、これは先手不満。
よって先手は敢然と▲2三歩。如何にも罠に嵌るような感じがありますが…

上図からの指し手
▲3六歩    △8三銀    ▲7六歩    △7四銀    ▲3五歩    △6五銀
▲2六飛



▲3六歩に△3四銀は▲7六歩で、このタイミングなら歩を取り返せます。▲3五歩まで突ければ△3四銀を防げるので、▲2三歩は取られません。
その間に後手は棒銀に出てみるもののの、上図までピッタリ受かる形です。2筋の傷が大きく、後手が指し切れないでしょう。

よって基本図から△4二銀は、それを活かす構想が難しそう。
遂に次回からは、相掛かり▲9六歩型のメインストリートに入ります。

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KKK 2023/1/21

土曜日に自宅で行います。
来られる方はご一報ください。


- KTF 相掛かり▲9六歩 No.4 -

基本図を再掲します。



基本図から①△5二金という手はほぼほぼ指されていないはずですが、△6二銀型なら力戦形として指されています。△7二銀型の場合は違和感がありありですが、現実はやっぱり難しいので考えてみましょう。

基本図からの指し手①-1
△5二金    ▲6八玉    △6四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛
△2三歩    ▲6四飛    △6三銀    ▲6六飛    △4二銀    ▲2六飛



①△5二金のイメージは"山崎八段調"。
基本図から△6四歩の変化で、▲6四飛と取らせるのは損だと述べました(No.2にて)が、ひねり飛車模様に指されたときに一手で▲4八玉と上がられてしまいます。よって▲6八玉と指したのを見て△6四歩と突き、ひねり飛車を封じてから取らせます。
先手は2歩を手にしましたが、△5二金の効果で△6三銀とすぐに飛車を追うことができました。

上図からの指し手
△4四歩    ▲7六歩    △4三銀    ▲7七角    △3四歩    ▲8八銀
△6四銀    ▲5八金    △7四歩    ▲7九玉    △4一玉    ▲4六歩
△5四歩    ▲4五歩    △5五歩



後手は雁木形にして陣形を盛り上げます。先手は▲7七角から飛車先交換を防ぎ、こちらも陣形を整備。ただ△7五歩や△6五銀などの攻め筋が残っているので、神経を使います。
▲4五歩から先攻する手が映りますが、△5五歩と位を張って上図まで。大きく指して後手の主張が通った局面と言えるでしょう。

基本図からの指し手①-2
△5二金    ▲5八玉    △6四歩    ▲3六歩    △3四歩    ▲2四歩
△同 歩    ▲同 飛    △6三銀    ▲7六歩    △4二玉    ▲3七桂
△9四歩    ▲2九飛    △2三歩



今度はいきなり横歩を取らない変化を考えます。
▲3六歩とすると次に▲3五歩があるので、△3四歩と角道を開けるのが自然な指し手。そこで飛車先を切って、一見は普通の進行です。
先手は▲3七桂と跳ね、直接▲2九飛と引くのが狙い。
▲3七桂の前に(△4二玉を指さずに)△2三歩と打つと、▲3四飛と取る手が成立します。△4二玉と指した後に▲3四飛とされれば、後手に△3三金から飛車をいじめる手があり先手危険。実は、これは最初の△5二金の一手が災いし、後手の手が間に合っていない計算なのです。

上図からの指し手
▲4六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛    ▲8七歩    △8二飛
▲4七銀    △5四銀    ▲6八銀    △8八角成  ▲同 金



最初の▲4六歩では▲7七金という力強い指し手もあります。本譜は普通の指し方で、なんてことのない互角の局面に見えます。
しかし先手だけ左銀を中央に使っていること、スムーズに▲2九飛と引けている点が大きいのです。昨今はバランス型の評価が高く、一早くその陣形を構築している先手が、手が進むにつれ十分の大勢となります。
△6五銀~△5四角の仕掛けは部分的に成立する可能性がありますが、本譜の場合は(ちゃんと応対すれば)無理筋です。

△6五銀~△5四角の筋の一例(上図から)
△6五銀    ▲7七銀    △5四角    ▲4八金    △7六銀    ▲同 銀
△同 角    ▲8六歩    △同 飛    ▲7七銀    △8二飛    ▲6六角



しかしながら、この変化は先手が良くなるとしましたが、後手が△3四歩と突いてこない可能性はあります。

基本図からの指し手①-3
△5二金    ▲7六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛    ▲2四歩
△同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲2五飛



△5二金に▲7六歩とする変化を考えます。お互い飛車先を交換した後、▲2五飛と引くのが狙いの一手。

上図からの指し手
△8二飛    ▲4八玉    △6四歩    ▲7七桂    △3四歩    ▲8五飛
△8四歩    ▲8七飛    △4二金左  ▲3九玉



▲7七桂~▲8五飛の指し方は、以前M越Jr.流としてご紹介させていただきました。△5二金型が飛車交換に弱い形なので、後手は歩を謝るぐらいになります。
後手不利とまでは言えないものの、不満が残る形といえるでしょう。ただ後手をもったとき、先手がこれを選んでくる可能性は低そう。そういう意味では①△5二金は一発勝負に温めておくのはアリかもしれません。

ここでさらなる工夫を考えます。

基本図からの指し手②
△1四歩    ▲3六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛    ▲5八玉
△8二飛    ▲8七歩    △6四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛



上図までの手順は、実戦譜も多数存在します。ここまでの手の意味は改めて解説予定ですので割愛しますが、ここで後手は(a)△6三銀と指し、▲2六飛△2三歩▲3五歩と先手に位を取らせて指すか、(b)△3四歩と強く突いて、▲同飛なら△2三金▲3五飛△3三桂と飛車を目標に指すのが定跡でした。

上図からの指し手
△2三歩    ▲6四飛    △5二金    ▲3五歩    △3四歩



しかし△2三歩と打ったのが棋聖戦第4局、永瀬vs藤井戦。かの藤井棋聖の新手でした。
▲6四飛に△5二金とします。基本図から①△5二金の変化に比べ、▲3六歩と突いてあることで▲6六飛~▲2六飛とすることができません。しかし普通に▲3五歩が間に合いそうなので、問題が無いように思えます。
△3四歩が驚愕の一着。▲同歩は△5五角があるものの…

上図からの指し手
▲6五飛    △6三銀    ▲3四歩    △4二銀    ▲2五飛    △4四歩
▲2六飛    △4三銀



実戦通りの進行です。▲3四歩と取られては一見大失敗したようですが、飛車を2筋に戻す手に対しては△4二銀~△4四歩~△4三銀で取り返すことができそうです。
藤井棋聖の構想が素晴らしく、先手が面白くない局面だと思います。

代案としては▲2五飛とした手に代え、
(a)▲7六歩には△8八角成▲同銀△2八角▲3七角△同角成▲同銀に△2七角から馬を作る手があり、難解な形勢です。
(b)▲3五飛は△4四歩▲3六飛△4三銀▲2七銀(▲3七桂は△2四歩~△2三金で歩を取られる)△5四銀右▲3七桂△2四歩▲2六銀△4五歩のような展開が考えられます。こうなると歩の損得うんぬんより戦いになってしまいそうなので、形勢不明。

現在の私の結論としては、後手視点で工夫が出来そうな将棋ではあると思っています。ただこれが主流として指されることは相当無いかな、という印象を受けますね。

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KKK 2022/12/18

日曜日に自宅で行います。
来られる方はご一報ください。


- KTF 相掛かり▲9六歩 No.3 -

相掛かり▲9六歩型を解説していこうという無謀な試みThird。
基本図を再掲します。



基本図からの指し手①
△7四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △1四歩    ▲7六歩
△7三銀    ▲2五飛



前回は基本図から△6四歩が指されない理由を述べましたが、①△7四歩も今は指されない手です。なぜでしょうか。
先手はやはり飛車先を切りますが、ここでも△1四歩が出てきます。代えて△2三歩と打つのが損な理由は後で触れます。
△7三銀で歩を守ることができましたが、▲2五飛が機敏な一着。

上図からの指し手①-1
△2三歩    ▲9七桂    △5四歩    ▲4八玉    △4二銀    ▲1六歩



△2三歩は自然ですが、▲9七桂から▲8五飛を狙う手がありました。桂の通り道に銀が配置されており、それなりに厳しい手になっています。
▲5五角の筋を防ぐ△5四歩ですが、じっくり自陣を整備し良いタイミングでぶつけを目論みます。
△4二銀で△8四銀としても、▲2四歩△同歩▲同飛と動いていけば後手が愚形で、先手勝ちやすい。

指し手①-2
△3四歩    ▲2四歩    △8八角成  ▲同 銀    △3三桂    ▲2八飛
△2二歩    ▲7七銀



△3四歩には上図まで進めます。後手が損をしているのは明らかでしょう。

基本図からの指し手②
△9四歩    ▲6八玉    △7四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛
△2三歩    ▲7四飛    △7三銀    ▲7六飛    △6四銀    ▲2六飛



基本図から一旦②△9四歩と様子見をします。▲6八玉はよく指されている手で、後手はここで△7四歩。2筋交換には△2三歩と打ち、▲7四飛と取らせます。
プロでも多く指されている、1歩取らせ定跡です。先手が手数をかけた間に後手は銀を繰り出すのが主張となります。

上図からの指し手
△3四歩    ▲7六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛    ▲8七歩
△8二飛    ▲4六歩    △4四歩



ここから後手の方針は分かれますが、一例としてこの順を紹介します。この定跡はまた詳しく解説する予定です(そこまで続けられるのか?w)。
△3四歩で△7五銀は▲7六歩△8六歩▲同歩△同銀▲6六角ぐらいで無理筋。
上図まで進み、先手玉が後手の繰り出した銀に対して当たりが強いような印象を受けないでしょうか。また7九の銀を使いたいのですが、このままでは動くことができません。
そこで▲5八玉や▲6九玉と手損して、形を直す実戦が多く見られます。▲6八玉に対して△7四歩から銀を繰り出すのは、理に適った手と言えるのです。

結論として基本図で△7四歩は指されず、先手の指し手を見てから得な条件で採用される手となっています。

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KKK 2022/11/19

土曜日に自宅で行います。
来られる方はご一報ください。


- こた(仮の超研究ファイル 相掛かり▲9六歩編 -

以前カテゴリを戦型別にしたところ、相掛かりの記事が少ないことに気付きました。
ともすれば、読者は「こた(仮は相掛かりができない」とお思いのことでしょうが、実はぼちぼち採用しています。
ただ相掛かりは序盤の一手一手の体系化がされにくく、言語化が難しいところがあります。微妙な違いは「どうやっても1局」となりがちです。
しかも連載テーマは相掛かりの▲9六歩型という流行形。手がむちゃくちゃ広いプロ好み。
厳しい挑戦になるのは必定です!w

初手からの指し手
▲2六歩    △8四歩    ▲2五歩    △8五歩    ▲7八金    △3二金
▲3八銀    △7二銀    ▲9六歩


上図がプロ間で今、流行している相掛かり▲9六歩型の基本図です。
テーマ外ではありますが、実際はここまででも色々な手があります。以前の記事で少し紹介していますので、よろしければご覧ください。

▲9六歩の意味を一言で表すのは難しいのですが、有効な手渡しで相手の手を見て陣形を選ぼうとしています。
後手の考えられる手はたくさんあります。主流となっているのは
(1)△1四歩
(2)△9四歩
(3)△3四歩
(4)△5二玉
(5)△4二玉

(5)△4二玉はあまり実戦例が多くないですが、(以前から指された手ではあったのですが)最近ポツポツ見られ、有力な手の1つと思われますので加えておきます。
なぜこれらの手が選ばれているのかを、将棋マニアの私はまず考えます。

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KKK 2021/12/11

土曜日に行います。

着る毛布、買いました。


-Special thanks : こた(仮を朝日アマでボコったM越Jr.くん-

大会の結果を綴る中で、M越Jr.くんとの対局において"5段目ひねり飛車"なる作戦のことを書きました。どういう作戦かというと、相掛かりにおいて▲2五飛と上段に構え、▲7七桂から▲8五飛とぶつけていく、というものです。
▲2五飛型において、△8五歩を狙って▲7七桂とするのは稀に出てくる手筋ですが、最初から飛車のぶつけを狙いにしたのは斬新なように思います。オリジナリティがあり、かつ優秀な作戦で、ブログのネタにはピッタリ。本人にブログに載せる許可を求めると、「ぜひ、どうぞ」「どうせ誰も見てないでしょ」と快くご承諾いただいたので、張り切ってご紹介します!

本人曰く、彼が大学生時代(といっても数年前だが)に学生将棋で一時期流行っていた作戦だということです。私には飛車が縦横に大きく動く様が、まるでジッパーがスライドするかのように見えるので、「zipperひねり飛車」と(勝手に)命名しよう。スティッキィ・フィンガーズ!

初手からの指し手
▲2六歩    △8四歩    ▲2五歩    △8五歩    ▲7八金    △3二金
▲3八銀    △7二銀    ▲9六歩    △1四歩    ▲2四歩    △同 歩
▲同 飛    △2三歩    ▲2五飛



指し始めは、相掛かりの最新形の手順と全く同じ。
▲9六歩はやはりプロでも多用される手で、藤井竜王も得意としています。対して後手の手はいろいろとあるものの、△1四歩は有力手の1つ。序盤の変化を全て書くとキリが無いので、今回はこの手に絞ることにします。
先手は飛車先を交換し、▲2五飛と構えるのがこの作戦の第一歩。

上図からの指し手
△6四歩    ▲7六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛    ▲7七桂



この辺りの相掛かりの序盤知識については、10月に書いた相掛かりの序盤考察の記事もご参考いただければと思います。
▲7六歩は次に▲7七角があるので、そこで後手も飛車先を切るのが自然。そこで▲7七桂と跳ねて先手の作戦が見えてきました。

上図からの指し手(1)
△8二飛    ▲4八玉    △6三銀    ▲8五飛    △8四歩



△8二飛~△6三銀は穏便に収めようという手です。しかし▲8五飛と大きく転回して、「zipperひねり飛車」の最初の狙いが実現しました。取ることはできないので△8四歩と謝るぐらいですが、先手は①▲8六飛と②▲3五飛のどちらも有力です。

上図からの指し手①-1
▲8六飛    △7四歩    ▲8五歩    △同 歩    ▲同 桂    △8四歩
▲9三桂成  △同 桂    ▲6六角



▲8六飛はひねり飛車の形です。▲7五歩と突かれるとそれが完成するので、癪とばかりに△7四歩は指したい手です。ただ飛車のコビンを開けるのは危険な意味もあり、▲8五歩といきなり動くのが継続手。
上図まで進めば9筋への攻めが残っており、先手良しになります。

指し手①-2
▲8六飛    △4一玉    ▲7五歩    △4二銀    ▲6八銀



▲7五歩とすることができれば、ひねり飛車の従来の形と似ています。同じく△8四歩と謝らせる丸田流と比較すると、▲2五飛~▲8五飛~▲8六飛とした分、▲2六飛~▲8六飛の形より一手損になっています。
しかし丸田流は後手の対策ができており、そもそも組み上がれば先手十分と言われる形。総合すると、先手が不満の無い展開だと私は判断しています。

指し手②
▲3五飛    △5二金    ▲6六歩



②▲3五飛とする手も有力です。この方がいろいろな意味で面白い指し方かもしれません。

上図からの指し手②-1
△5四銀    ▲9七角    △6三金    ▲6五歩    △同 歩    ▲6四歩
△6二金    ▲3六飛    △4一玉    ▲5六飛



△5四銀と進軍しようとすると、▲9七角が一見軽そうに見える動き方です。しかし△6三金に▲6四歩と拠点を作られてから▲3六飛とされると、後手に有効手が見当たりません。
▲5六飛は次に▲5四飛~▲7一銀の強襲を狙っていますが適当な受けもなく、先手有利。

指し手②-2
△4一玉    ▲6五歩    △同 歩    ▲同 飛    △6四歩    ▲6九飛



△5四銀に代えて△4一玉とすると、▲6五歩△同歩▲同飛として、▲6九飛まで転回します。先手がとても軽い形(いい意味で)となっているのがお分かりいただけるかと思います。飛車が▲2五飛~▲8五飛~▲3五飛~▲6五飛~▲6九飛と縦横無尽に動く様は、見ているだけでも気分上々です。既に「アリーヴェデルチ」と決め台詞を言われている状態
実際の形勢も互角の範疇ながら、先手が十二分に指せる局面でしょう。

指し手(2)
△3四歩    ▲4八玉    △4二玉    ▲8五飛    △同 飛    ▲同 桂



後手ももう少し強く指さないと、先手の術中にハマります。
△3四歩~△4二玉は「そんなん怖くないよ」と暗に言っている手ですが、先手は全く気にせず▲8五飛とぶつけていく。

上図からの指し手①
△8三飛    ▲8六歩    △8四歩    ▲2二角成  △同 銀    ▲9三桂成
△同 飛    ▲9五歩    △8三飛    ▲9四歩    △8五歩    ▲6六角



△8三飛~△8四歩は桂を取りに行く手で、第一感こう指したいところ。しかし桂の成捨てから、やはり9筋の端攻めで手を作ります。
最後の▲6六角が好地点の角打ちで、先手が指せます。

指し手②
△8八角成  ▲同 銀    △2五飛



ということで、△2五飛と打つぐらいでしょうか。
この後の展開は色々考えられるので難しいのですが、お互い攻め合うことになりそうです。

様々な変化を見てきましたが、先手良しの変化がとても多く、実戦的にも有力な作戦です。現代的で超難解な相掛かりを避けやすく、また後手番でも応用できる可能性があり、使い勝手は◎。
プロの将棋でも実は採用されており、将来的に注目度が跳ね上がるかもしれません。

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KKK 2021/10/17

日曜日に行います。


-最新相掛かりの序盤考察-

相掛かりは現代将棋において、日進月歩でアップデートが続いています。本記事は序盤の短い分岐を、考え方を踏まえながら「相掛かりを指し始めるきっかけになってくれれば」という気持ちで書きたいと思います^^(詳しく書きすぎると恥をかく可能性が高いですからなw)

初手からの指し手
▲2六歩    △8四歩    ▲2五歩    △8五歩    ▲7八金    △3二金
▲3八銀    △7二銀



一口に相掛かりといっても多種多様な形があります。相居飛車の力戦形は相掛かりに分類されるようなものが多く、分岐はそれこそ無数に存在します。ただ一般的にはお互い飛車先を2つ突いて、▲7八金△3二金とした形が相掛かりのスタートとなります。
現在はそこから▲3八銀△7二銀と銀を上がるのがほとんどですが、以前は▲2四歩△同歩▲同飛と1歩交換をしていました。これは「おまじない」のようなもので、やっといても損はないというか、保留する意味を見いだせずにいたのです。この意味については、また後で述べます。

ちなみに▲3八銀(△7二銀)では▲5八玉(△5二玉)とする手もたまに指されており、より早い仕掛けを狙ったり、場合によっては▲3八金(△7二金)と上がったりする含みがあります。(今回は割愛します。)

上図からの指し手(1)
▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲2八飛    △3四歩
▲2七銀    △3三角    ▲3六銀    △2二銀



飛車先を交換して▲2七銀~▲3六銀と進出するのが、UFO銀(相掛かり棒銀)という指し方です。6,7年ぐらい前までは人気のある指し方でしたが、今では一部の棋士のみが採用している状況です。
後手は△3三角と上がるのが基本の受け方となります。もし▲2五銀と上がられても、△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8四飛▲2四歩△3五歩で受かります。
よって上図以下は駒組みになり、これからの将棋です。

さて、UFO銀以外ですと、実は作戦の名前が付いたものはそれほど多くありません(Alpha Zero流ぐらいか)。
指し手の候補は▲5八玉、▲6八玉、▲9六歩、▲1六歩、▲3六歩、▲4六歩、▲7六歩などたくさんあり、後手にも対称で同じ手が考えられます。またどこで▲2四歩から歩を切るかというのも考えものです。
全てを網羅すると、こた(仮が老いてしまうので、代表的な変化を取り上げます。

指し手(2)
▲5八玉    △5二玉    ▲7六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛
▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲2六飛    △3四歩
▲8七歩    △8四飛



▲5八玉△5二玉の交換を入れてから、▲7六歩と角道を開けます。ここで△8六歩ですが、横歩を取れそうなタイミングで飛車先を切るのが基本となります。先手も手順に飛車先を切りながら▲2六飛と引くことで、7六の歩を守ります。以下△8四飛としたところは同形となりました。
何気ないやり取りのようですが、実は以前の感覚でいうと、「先手が浮き飛車→後手は引き飛車」が常道の考え方でした。つまり、▲2六飛は攻撃的な構えなのですが、△8四飛は当たりが強い位置とも言えるのです(例えば▲6六角が両取りになったりとか)。しかしながら、△5二玉はバランス型の構えで、△8二飛よりは△8四飛にFitしています。要するに△5二玉を見て、先手はこの進行を選んだというわけですね。(ただし形勢自体は互角。)
逆に、「先手が引き飛車→後手は浮き飛車」というのが、もう1つの基本でした。これは指し手(1)のように、棒銀に対して飛車の横利きで受けるためです。
上図以下は、先手は▲3六歩と突きます。後手も△7四歩とする(△9四歩とする手もよく指されている)と、①▲2四歩△同歩▲同飛と横歩を狙い、△7五歩▲同歩△2三歩▲2五飛となるのが一例です。また②▲3七桂△7三桂とし、(成立するかは別として、どこかで)▲3五歩△同歩▲4五桂と攻める手法もあります。

指し手(3)
▲1六歩    △1四歩    ▲6八玉    △5二玉    ▲7六歩    △8六歩
▲同 歩    △同 飛    ▲3六歩    △9四歩    ▲3七桂    △7六飛



▲1六歩は先手にとって端攻めを見せていること、△2八歩や△2八角に(多少)強くなっていることが主なメリットです。
△1四歩では受けない手もあり、その場合は▲1五歩と伸ばして主張点を作ることになりそうです。△1四歩のメリットとしては次に△6四歩(△7四歩)とし、▲2四歩△同歩▲同飛に△6三銀(△7三銀)と上がることができるというものがありますが、▲6八玉か▲5八玉型の場合は、▲2三歩△1三角▲2八飛として先手十分とされています。△2四歩には▲1五歩と攻めることができます。
▲6八玉は△7六飛の横歩取りに強い形で、7筋の金銀に玉自ら紐を付けています。よって恐れずに▲3六歩~▲3七桂と活用するのが攻撃的な指し方。
上図まで、後手が△7六飛と取れば決戦に突入します。以下先手は▲8二歩や▲1五歩を絡めて攻めることになります。

指し手(4)
▲9六歩    △1四歩    ▲6八玉    △6四歩    ▲2四歩    △同 歩
▲同 飛    △6三銀    ▲2八飛    △2三歩    ▲2七銀



▲9六歩はプロで一番多い指し方かも(集計はしていない)。
▲9六歩は相手が受けなくても、基本的に▲9五歩と位を取るような狙いではありません。これには△1四歩、△5二玉、△9四歩がよく指されているので、順に見ていきます。
今度は△1四歩を活かし、△6四歩と突く手が成立します。ただし棒銀に変化されたとき、飛車の横利きで受けるのが難しくなっています(指し手(1)と比べてください)。形勢自体は1局の将棋です。

指し手(5)
▲9六歩    △5二玉    ▲4六歩    △7四歩    ▲7六歩    △8六歩
▲同 歩    △同 飛    ▲4七銀



後手が△7二銀とした局面で色々な候補があると述べましたが、実際はすぐ▲3六歩や▲4六歩はやりにくい。△8六歩から横歩を狙われてしまうからです。
そこで▲9六歩と突くことにより、横歩を守ることが可能になります。加えて△5二玉型(急戦系の陣形)に▲4六歩~▲4七銀から持久戦模様になれば、さらに相性が良いわけです。
上図以下、もし△7六飛なら▲8七金で飛車を圧迫する手があります。

ちなみに王座戦の第3局では、▲9六歩△5二玉▲4六歩△7四歩に先手が方針を切り替え、▲2四歩から動いていきました。これはトッププロの将棋なので、序盤の一手一手が遥か先を精査した上で選ばれています。

指し手(6)
▲9六歩    △9四歩    ▲5八玉    △5二玉    ▲3六歩    △8六歩
▲同 歩    △同 飛    ▲3七桂



これは先ほど少し出てきた「Alpha Zero流」です。
▲3七桂といち早く活用することで、△8七歩▲9七角の変化は5三の地点が怖いでしょう、というわけです。また△8四飛には▲7六歩で、相手の飛車先を受けずに戦うことを狙っています。ソフト発祥だけに、非常に大胆な指し方ですね。

指し手(7)
▲6八玉    △7四歩    ▲7六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛
▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲7四飛    △7三銀



後手の△7四歩は今回の場合、早繰り銀を画策しています。▲6八玉が当たりが強いので、銀を繰り出すのが有効だと見ているわけです。
ただし今まで見てきたように、この△7四歩は▲2四歩から狙われることとなります。(本譜は一旦▲7六歩を入れましたが、いきなり▲2四歩も有力です。)ただ後手番の場合は、1歩損しても主張点(この場合は飛車を追いながら銀を繰り出し、手得できる)ができればまずまずという大局観です。
最初の話に戻りますが、横歩を取る動きは7手目に歩交換をしていると再度歩を合わせることとなり、1手損をすることになります。後手側に新しい大局観が生まれたので、先手も歩の交換を保留することで、できる限り得な盤面を目指そうとしている訳ですね。

本当に序盤の指し始めのところだけ取り上げたので、そこからの駒組みや仕掛けの知識が無いと、いきなり相掛かりを採用するのは躊躇われるかもしれません。そこはぜひ自分で調べてみてください。
そうすることで相掛かりの面白さがわかってきますし、ここで取り上げた以外の指し方にも、きっと興味が出てくると思います。

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KKK 2020/9/20

日曜日です。


将棋小話 -時代を逆行する△6二銀型-

今回は相掛りのお話。相掛りはとても由緒ある戦法ですが、まだまだ評価が定まらない変化が数多く残された戦型です。

初手からの指し手
▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲3八銀△6二銀



さて、今回は後手目線でお楽しみください。
先手の▲3八銀は最近の流行で、ほとんどがこう指されています。後手も△7二銀と追随する場合が大多数なのですが、△6二銀と上がってみます。これも当然ながら自然な形で、割と近年まで主流でした。

▲6八玉△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8四飛▲7六歩△3四歩▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛△4一玉



飛車先を交換するタイミングがお互い考えどころというのは最新の相掛り事情ですが、簡明を期すため本譜は早めに交換しておきました。先手の陣形は最近よく見る形。後手は△4一玉型が近頃では珍しい。ほとんどが△5二玉か△4一玉(△7二銀型で)と指されています。

▲4六歩△5四歩▲4七銀△5五歩



 ▲4六歩に対し△5四歩は、▲6八玉型に特に有効な指し手。△5五歩と位を取ったとき、玉を移動しないと▲6八銀が指せないからです。ただし▲4六歩で▲3六歩と指された場合は、一度△5二金や△7四歩がオススメ。▲3六歩に△5四歩では、▲3七銀△5五歩▲4六銀と手順に位を目標にする手が厄介です。
こういう中央志向の作戦は現代では軽視されがちです。しかし相手の動きによって柔軟に以前の指し方を取り入れられると、作戦の幅がさらに広がります。

▲3六歩△5三銀▲3七桂△4二銀上▲4八金△7四歩▲2九飛△6四銀▲5八玉△7五歩



先手は▲4八金+▲2九飛という、やはり流行形を目指してみます。もちろん▲5八金型も有力。後手は右銀を繰り出しますが、位を支えるのかと思いきや7筋からの開戦を狙っていました。先手は自然な手を指し続けて(陣形だけ見れば)理想形に組み、もしかしたら途中は作戦勝ちを意識していたかもしれません。しかし△7五歩と仕掛けた局面は、既に後手ペースになっています(形勢はほぼ互角とはいえ)。

これは上手くいった例ではありますが、僅かな手順前後や配置によって将棋は常に大きな広がりを見せてくれます。81マスの宇宙なんてのは、ありきたりな表現ですけどね。
古い棋譜から使える形を掘り起こす楽しさが判ってきたら、貴方もマニアの第一歩を踏み出しているかもしれませんw

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