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男子はいつまでも中2病、がコンセプトの将棋ブログ。

-矢倉戦法のバランス化-

今週末のKKKは、お休みとさせていただきます。


今回は最新矢倉のお話(前編)をお贈りいたします。

さて、昨今の特に相居飛車戦において、陣形全体のバランスが重視されていることを述べるのは、こんな場末のブログを好んでご覧の方には釈迦に説法でしょう。ただ矢倉戦法においては、他の戦法と比べてすぐの角交換になりにくい意味もあって、バランス化の波は緩やかなものでした。

そんな中、最近流行を見せつつある作戦△6三銀型を取り上げたいと思います。名人戦第4局で採用され、藤井二冠も直近で後手番を持って2局採用しています。
最初にお断りしておくと、まだこの作戦は決まった定跡が確立していません。各々の個性が現れるので、手順は一例だと思ってください。



この図は▲2六歩△6四歩▲2五歩と進んだところですが、△6四歩で△4二銀と上がり、▲2五歩に対して△3三銀と受けるのは以前の主流です。以下は△6三銀型の作戦を取る場合、米長流急戦矢倉になるのが相場でした。(作戦としては他にもあるが。)
また△3三角で受け、雁木にするのも最近多い作戦です。矢倉vs雁木の将棋も割とホットな戦型ですが、今回は割愛します。

上図からの指し手(1)
△3二金    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △6三銀



本譜は2筋の受けを△3二金だけに留め、飛車先を換えさせる権利を与えます。新しい局面の捉え方が生まれ、最近になって登場が増えている形。
後手の作戦にどういう主張があるかというと、これはけっこう難しい。敢えて解説を付けるとすると、1.角道を通したまま攻める形を作りやすい、2.バランスの良い陣形を目指している、という感じでしょうか。
まず先手が▲2四歩を決行する形を考えてみます。横歩取りを狙って、後手の指し方を咎めにいっているという感じ。ただし(2)△3二金▲4八銀…の進行もよく指されています。引き角にしてより矢倉的な指し方です。これは後編で。
横歩取りが本手順ですが、先に引き飛車から持久戦を目指すとどうなるのか見てみましょう。

上図からの指し手①
▲2八飛    △2三歩    ▲4八銀    △4二銀    ▲5八金    △5四歩
▲5六歩    △7三桂    ▲6六歩    △4一玉    ▲6九玉    △5二金
▲6七金右  △8五歩    ▲3六歩


上図まで進んで、後手の陣形は昔からある急戦の形に収まりました。1局の将棋ですが、後手が△6五歩から攻める権利を握っています。こういう形は、最近は後手に主導権があると見られています。
また、△5二金で△5二飛▲6七金右△6二金と矢倉中飛車にするのも有力。以下▲6八銀と引くのが定跡の教える形ですが、一度上がった銀ですからちょっと抵抗がありますね。

指し手②
▲3四飛    △3三角    ▲3五飛    △2四歩    ▲3六飛
△4四角



横歩を取られたときの対処は2通り。②▲3四飛に△3三角か、③▲3四飛に△4四角です。先手の角道が通っていない以上、▲3四飛にすぐの厳しい狙いはありませんが、後手も飛車をいじめなければ主張が作れません。
△3三角は直接的に飛車を帰さないという手ですが、ここからの動きは面白い。▲3五飛と1つ引くと、△2四歩でやはり2筋には戻させない。▲3六飛ともう1つ引けば、やはり△4四角で戻させない。
飛車を巡る動きが面白いですが、ここからはまだ未知数の将棋と言えるでしょう。とりあえず先手は▲4六歩と角を追う手を見せますが、以下△5四銀か△2二銀が有力。△2二銀なら▲4八銀△4二玉▲4五歩△3三角▲2六飛△5四銀▲3六歩△4五銀▲3五歩…というのが実戦例のある進行です。

指し手③
▲3四飛    △4四角    ▲2四飛    △2二銀    ▲2八飛    △7三桂
▲4六歩    △3三桂    ▲5八金    △5四歩



▲3四飛に△4四角もあります。以下スムーズに▲2八飛まで戻ることができますが、後手は両桂を活用してこれまた面白い形。後手からは△2六歩と垂らす手が含みにあります。

この前の叡王戦、行方九段vs藤井二冠戦で、藤井二冠がこの△4四角型を採用しました。途中の手順は違いますが、下の図のように進展しています。


後手は中住まいにして、バランスの取れた陣形。上半分だけ見たらとても矢倉戦法からの派生とは思えないでしょう。

TUDUKU。

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