忍者ブログ
男子はいつまでも中2病、がコンセプトの将棋ブログ。

KKK 2021/10/17

日曜日に行います。


-最新相掛かりの序盤考察-

相掛かりは現代将棋において、日進月歩でアップデートが続いています。本記事は序盤の短い分岐を、考え方を踏まえながら「相掛かりを指し始めるきっかけになってくれれば」という気持ちで書きたいと思います^^(詳しく書きすぎると恥をかく可能性が高いですからなw)

初手からの指し手
▲2六歩    △8四歩    ▲2五歩    △8五歩    ▲7八金    △3二金
▲3八銀    △7二銀



一口に相掛かりといっても多種多様な形があります。相居飛車の力戦形は相掛かりに分類されるようなものが多く、分岐はそれこそ無数に存在します。ただ一般的にはお互い飛車先を2つ突いて、▲7八金△3二金とした形が相掛かりのスタートとなります。
現在はそこから▲3八銀△7二銀と銀を上がるのがほとんどですが、以前は▲2四歩△同歩▲同飛と1歩交換をしていました。これは「おまじない」のようなもので、やっといても損はないというか、保留する意味を見いだせずにいたのです。この意味については、また後で述べます。

ちなみに▲3八銀(△7二銀)では▲5八玉(△5二玉)とする手もたまに指されており、より早い仕掛けを狙ったり、場合によっては▲3八金(△7二金)と上がったりする含みがあります。(今回は割愛します。)

上図からの指し手(1)
▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲2八飛    △3四歩
▲2七銀    △3三角    ▲3六銀    △2二銀



飛車先を交換して▲2七銀~▲3六銀と進出するのが、UFO銀(相掛かり棒銀)という指し方です。6,7年ぐらい前までは人気のある指し方でしたが、今では一部の棋士のみが採用している状況です。
後手は△3三角と上がるのが基本の受け方となります。もし▲2五銀と上がられても、△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8四飛▲2四歩△3五歩で受かります。
よって上図以下は駒組みになり、これからの将棋です。

さて、UFO銀以外ですと、実は作戦の名前が付いたものはそれほど多くありません(Alpha Zero流ぐらいか)。
指し手の候補は▲5八玉、▲6八玉、▲9六歩、▲1六歩、▲3六歩、▲4六歩、▲7六歩などたくさんあり、後手にも対称で同じ手が考えられます。またどこで▲2四歩から歩を切るかというのも考えものです。
全てを網羅すると、こた(仮が老いてしまうので、代表的な変化を取り上げます。

指し手(2)
▲5八玉    △5二玉    ▲7六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛
▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲2六飛    △3四歩
▲8七歩    △8四飛



▲5八玉△5二玉の交換を入れてから、▲7六歩と角道を開けます。ここで△8六歩ですが、横歩を取れそうなタイミングで飛車先を切るのが基本となります。先手も手順に飛車先を切りながら▲2六飛と引くことで、7六の歩を守ります。以下△8四飛としたところは同形となりました。
何気ないやり取りのようですが、実は以前の感覚でいうと、「先手が浮き飛車→後手は引き飛車」が常道の考え方でした。つまり、▲2六飛は攻撃的な構えなのですが、△8四飛は当たりが強い位置とも言えるのです(例えば▲6六角が両取りになったりとか)。しかしながら、△5二玉はバランス型の構えで、△8二飛よりは△8四飛にFitしています。要するに△5二玉を見て、先手はこの進行を選んだというわけですね。(ただし形勢自体は互角。)
逆に、「先手が引き飛車→後手は浮き飛車」というのが、もう1つの基本でした。これは指し手(1)のように、棒銀に対して飛車の横利きで受けるためです。
上図以下は、先手は▲3六歩と突きます。後手も△7四歩とする(△9四歩とする手もよく指されている)と、①▲2四歩△同歩▲同飛と横歩を狙い、△7五歩▲同歩△2三歩▲2五飛となるのが一例です。また②▲3七桂△7三桂とし、(成立するかは別として、どこかで)▲3五歩△同歩▲4五桂と攻める手法もあります。

指し手(3)
▲1六歩    △1四歩    ▲6八玉    △5二玉    ▲7六歩    △8六歩
▲同 歩    △同 飛    ▲3六歩    △9四歩    ▲3七桂    △7六飛



▲1六歩は先手にとって端攻めを見せていること、△2八歩や△2八角に(多少)強くなっていることが主なメリットです。
△1四歩では受けない手もあり、その場合は▲1五歩と伸ばして主張点を作ることになりそうです。△1四歩のメリットとしては次に△6四歩(△7四歩)とし、▲2四歩△同歩▲同飛に△6三銀(△7三銀)と上がることができるというものがありますが、▲6八玉か▲5八玉型の場合は、▲2三歩△1三角▲2八飛として先手十分とされています。△2四歩には▲1五歩と攻めることができます。
▲6八玉は△7六飛の横歩取りに強い形で、7筋の金銀に玉自ら紐を付けています。よって恐れずに▲3六歩~▲3七桂と活用するのが攻撃的な指し方。
上図まで、後手が△7六飛と取れば決戦に突入します。以下先手は▲8二歩や▲1五歩を絡めて攻めることになります。

指し手(4)
▲9六歩    △1四歩    ▲6八玉    △6四歩    ▲2四歩    △同 歩
▲同 飛    △6三銀    ▲2八飛    △2三歩    ▲2七銀



▲9六歩はプロで一番多い指し方かも(集計はしていない)。
▲9六歩は相手が受けなくても、基本的に▲9五歩と位を取るような狙いではありません。これには△1四歩、△5二玉、△9四歩がよく指されているので、順に見ていきます。
今度は△1四歩を活かし、△6四歩と突く手が成立します。ただし棒銀に変化されたとき、飛車の横利きで受けるのが難しくなっています(指し手(1)と比べてください)。形勢自体は1局の将棋です。

指し手(5)
▲9六歩    △5二玉    ▲4六歩    △7四歩    ▲7六歩    △8六歩
▲同 歩    △同 飛    ▲4七銀



後手が△7二銀とした局面で色々な候補があると述べましたが、実際はすぐ▲3六歩や▲4六歩はやりにくい。△8六歩から横歩を狙われてしまうからです。
そこで▲9六歩と突くことにより、横歩を守ることが可能になります。加えて△5二玉型(急戦系の陣形)に▲4六歩~▲4七銀から持久戦模様になれば、さらに相性が良いわけです。
上図以下、もし△7六飛なら▲8七金で飛車を圧迫する手があります。

ちなみに王座戦の第3局では、▲9六歩△5二玉▲4六歩△7四歩に先手が方針を切り替え、▲2四歩から動いていきました。これはトッププロの将棋なので、序盤の一手一手が遥か先を精査した上で選ばれています。

指し手(6)
▲9六歩    △9四歩    ▲5八玉    △5二玉    ▲3六歩    △8六歩
▲同 歩    △同 飛    ▲3七桂



これは先ほど少し出てきた「Alpha Zero流」です。
▲3七桂といち早く活用することで、△8七歩▲9七角の変化は5三の地点が怖いでしょう、というわけです。また△8四飛には▲7六歩で、相手の飛車先を受けずに戦うことを狙っています。ソフト発祥だけに、非常に大胆な指し方ですね。

指し手(7)
▲6八玉    △7四歩    ▲7六歩    △8六歩    ▲同 歩    △同 飛
▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲7四飛    △7三銀



後手の△7四歩は今回の場合、早繰り銀を画策しています。▲6八玉が当たりが強いので、銀を繰り出すのが有効だと見ているわけです。
ただし今まで見てきたように、この△7四歩は▲2四歩から狙われることとなります。(本譜は一旦▲7六歩を入れましたが、いきなり▲2四歩も有力です。)ただ後手番の場合は、1歩損しても主張点(この場合は飛車を追いながら銀を繰り出し、手得できる)ができればまずまずという大局観です。
最初の話に戻りますが、横歩を取る動きは7手目に歩交換をしていると再度歩を合わせることとなり、1手損をすることになります。後手側に新しい大局観が生まれたので、先手も歩の交換を保留することで、できる限り得な盤面を目指そうとしている訳ですね。

本当に序盤の指し始めのところだけ取り上げたので、そこからの駒組みや仕掛けの知識が無いと、いきなり相掛かりを採用するのは躊躇われるかもしれません。そこはぜひ自分で調べてみてください。
そうすることで相掛かりの面白さがわかってきますし、ここで取り上げた以外の指し方にも、きっと興味が出てくると思います。

拍手[0回]

PR