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男子はいつまでも中2病、がコンセプトの将棋ブログ。

KKK 2021/9/11

今週末は土曜日に行います。
来週末は県名人戦(9/19)の特訓をしているため、お休みさせてください。


-振り飛車新時代-

つい最近まで、振り飛車の囲いと言えば、ほぼ美濃囲い一択でした。(あとは穴熊があるぐらい。)

一体いつから美濃囲いは存在したのでしょうか。
調べてみたところ、実は江戸時代の中期~後期には、もう美濃囲いが指されていたようです。とても長い歴史を持つ囲いですが、戦前は△7二玉型で戦うような振り飛車も多く指されていました。(江戸時代の将棋、つまりは御城将棋だが、残存する棋譜によるとということ。昔は中央の手厚さを重視していたため、玉を深く囲うことは主流にはならなかった。)
美濃囲いが当然のように選ばれるようになったのがいつなのか、私には正確なところはわかりませんが、戦後から美濃囲いが主流になったのではないかと思われます。(大山一強時代の1960年ぐらいにはもう美濃だけだった。)

さて、それほど長い時代の間、美濃囲いは振り飛車で最も優秀な囲いと信じ続けられてきたわけですが、現代ではそれが見直されていることは、私も以前から言及してきました。それは振りミレ(トーチカ)や耀龍(2枚金の形)という居飛車穴熊対策の囲いでしたが、実は急戦系でも美濃囲い以外で戦う作戦が考えられています。

というわけで、今回は四間飛車の金美濃作戦をご紹介します。

初手からの指し手
▲7六歩    △3四歩    ▲2六歩    △9四歩    ▲9六歩    △4四歩
▲4八銀    △4二飛    ▲5六歩    △6二玉    ▲6八玉    △7二玉
▲7八玉    △3二銀



ここまでの手順に特に違和感はないかと思いますが、後手は△4一金型を維持するのが作戦のポイントです。△5二金左と上がってしまうと金美濃との相性が悪く、今回のテーマとは別の作戦になります。
先手の急戦策として、(1)エルモ囲いと(2)▲5七銀左型急戦について見ていきます。

上図からの指し手(1)
▲5七銀    △4三銀    ▲2五歩    △3三角    ▲3六歩    △8二玉
▲6八銀上  △6二銀    ▲7九金    △7二金



△8二玉~△6二銀~△7二金の形が「金美濃」囲いです。名前に"美濃"と入っていますが、全然美濃じゃないですねw(ちなみに△6三銀型になると「木村美濃」になる。これは一応美濃囲いから派生するが、やっぱり美濃ではない。)
一方▲6八銀上~▲7九金はエルモ囲いで、こちらは昔から囲いの形としては存在していたものの、現代で新たな戦術として取り入れられて名前が付いたもの。現代では急戦系の囲いとして、お手軽でまぁまぁ堅いとの評判で、出現確率としては最も高いでしょう(舟囲いという汎用性の塊のような奴は除く)。

上図からの指し手①
▲4六銀    △4五歩    ▲3三角成  △同 桂    ▲5七銀引  △2二飛
▲5八金    △5四歩    ▲6六歩    △6四角



▲4六銀はエルモ囲いで一番シンプルな仕掛け。先手の陣形だけなら、プロでも何局も指されています。
対して、いきなり△4五歩が今までありそうで無かった対応方法です。角交換の後△2二飛と受ければ、攻めを収めることができます。
▲5八金~▲6六歩は自然な第2次駒組み(正確にはやや疑問か)ですが、いきなり△6四角と打つ手がありました。

上図からの指し手
▲3七角    △同角成    ▲同 桂    △5三銀    ▲4八金    △4四銀右
▲8八玉    △2一飛    ▲7八金    △4二金    ▲6七銀    △3五歩
▲2六飛    △6二角



先手は▲3七角と合わせるのが自然な対応。しかし△同角成▲同桂と桂をわざと跳ねさせた後、△5三銀~△4四銀右と力強く繰り出すのが良い手です。
以下自陣整備してから△3五歩と桂頭攻めし、後手有利。▲2六飛には△6二角と数を足す手があり、かえって飛車まで召し取られそうです。

指し手②
▲4六銀    △3二金    ▲3五歩    △4五歩    ▲3三角成  △同 桂
▲5五銀    △5四歩    ▲6六銀    △3五歩



▲4六銀には△3二金と上がる手も有力。左辺は軽く捌く従来の振り飛車ではなく、全体でバランスを取るのが基本的な姿勢です。△3二金型と金美濃が相性の良い形というわけですね。
▲3五歩にはやはり△4五歩と反発し、上図まで進めば後手指せる形勢です。

指し手③
▲1六歩    △1四歩    ▲4八金    △5四歩    ▲3八飛    △3二金
▲3五歩    △同 歩    ▲4六銀    △4五歩    ▲3五銀    △8八角成
▲同 玉    △6四角



いきなり▲4六銀と出ても上手くいかないので、▲1六歩~▲4八金と自陣に手を入れ、▲3八飛と寄るのがちょっとしたジャブです。対して従来の常識だと△3二飛とするのが「普通」ですが、やはり△3二金とするのがこの形には合っているでしょう。
▲3五歩~▲4六銀にはまたもや△4五歩の対抗策一本で、△6四角とこのラインで牽制すれば急戦は挫折します。後手十分。

エルモ編はこれぐらいで区切りとしますが、実は私も実戦でこの展開を指しています。去年の県名人戦挑戦者決定戦決勝、vsW塚五段戦(私が居飛車側)です。
その将棋はお互いバランスを取りながら駒を組み替える、難解な神経戦に進みました。こうなると全くアマチュア向きではないですが、1局の将棋となります。(当時のブログで、たしか「この形が出るとは思わなかった」と書きましたが、普通のアマは全然気にしなくていい変化だと思いますw 高い実力を有するW塚くん(全国クラス)相手だからこそ出現した将棋です。)

指し手(2)
▲5八金右  △4三銀    ▲2五歩    △3三角    ▲3六歩    △8二玉
▲6八銀    △6二銀    ▲5七銀左  △7二金    ▲6八金上  △5四歩
▲4六歩    △3二金



次に(2)▲5七銀左型急戦の対応について考えます。
後手の組み方は全く同じです(お手軽!)。▲4六銀型の急戦については、エルモ囲いと同じ対応策で問題ありません。
▲4六歩には△3二金としておけば、▲4五歩からの仕掛けも気にする必要が無くなります。

上図からの指し手
▲3七銀    △4一飛    ▲3八飛    △5一飛
▲3五歩    △同 歩    ▲2六銀    △4五歩



先手は棒銀に出るのが最後の手段。これには△4一飛~△5一飛と中飛車に組み替えます。こうなると昔の中飛車vs棒銀の将棋とほぼ同じです。
仕掛けに対してタイミングよく△4五歩とするのは、振り飛車の呼吸。

上図からの指し手①
▲3三角成  △同 桂    ▲3五銀    △2七角    ▲3七飛    △4九角成



角交換すると△2七角の隙があり、これは後手が指せます。△3六角成を許さないのは▲3七飛ですが、△4九角成として十分。

指し手②
▲6六銀    △6四歩    ▲3五銀    △6五歩    ▲7七銀    △5五歩
▲4五歩    △5六歩    ▲4四歩    △5四銀



角交換拒否の▲6六銀には△6四歩~△6五歩と銀に働きかけ、5筋から攻めます。上図まで進むとお互い主張があり、ほぼ互角の形勢です。

この将棋はなにか、新鮮さと懐かしさが同居するような感覚がありますね。

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