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男子はいつまでも中2病、がコンセプトの将棋ブログ。

KKK 2021/6/27

日曜に行います。


-青野流の変遷-

最初に、青野流の流行の理由について考察します。
前回申し上げた通り、近年の横歩取りにおいて△8四飛+△7二銀型は後手の有力戦法として、先手にとっては悩みの種となりました。横歩取りを先手が避けると相掛かりになりますが、これは先手がやや不満な形と見られていました。(昨今の相掛かりの流行で現状では新しい形が生まれており、この辺りは見直しが必要なところだろう。)また、△8四飛+△7二銀型は後手が主導権を握る展開になりがちなことも、先手としては面白くない要素でしょう。
よって、幾人も横歩取りのスペシャリストが生まれ、後手番になると毎回横歩取りを選んできます。先手はより有力かつ、アグレッシブな対策が求められたのです。

そこでフォーカスが当たったのが青野流でした。元々青野九段が最初に指していた陣形であったとはいえ、採用が増えたのは「ソフトが推していた」というのが大きい要素となっています。一早く桂の活用を図り、攻めに重点を置いた指し方です。青野九段が指した当初はあまりにも前のめりな指し方のため、真似するのはかなりの躊躇いがあったことでしょう。しかしソフトの評価値の高さを知ると、人間の青野流に対する見方も大きく変わりました。

ソフトの後押しを得た青野流は、一時期後手の横歩取りを激減に追い込みました。それはソフト研究で先手に有力手段が多いということだけでなく、評価値が後手にとって悪いというイメージもあったことでしょう。
しかし最近は後手の有力な手段がいくつも現れ、また復活傾向にあります。

さて、青野流のスタートは下の図の局面です。▲3六飛と引かず、▲5八玉とするのが合図。この図を基本図とします。



ちなみに▲6八玉なら「勇気流」ですが、こちらは割愛いたします。
この後、先手は基本姿勢として▲3六歩~▲3七桂を目指しています。対して後手の指し手は非常に幅広いところです。たしか以前、「注目は△4二銀」という記事を取り上げたかと思いますが、これは一変化に過ぎません。

私もまだ整理が出来ていないのですが、まず▲5八玉に対し考えられる手を全て列挙してみます。
(1)△7六飛
(2)△2二銀
(3)△8二飛
(4)△8五飛
(5)△4二玉
(6)△4一玉
(7)△5二玉
(8)△6二玉
(9)△4二銀

多くね?w

次の手がほぼ▲3六歩になるので、この中から違う駒の2つの手を組み合わせる場合も多いです。例えば▲5八玉に対し、△4一玉▲3六歩△4二銀と、△4二銀▲3六歩△4一玉は同じ局面で、どちらもあり得ます。しかし先手には▲3六飛という選択肢もある(まだ青野流が確定しているわけではない)ので、▲5八玉に選ぶ手によって、△4一玉▲3六飛△2二銀や△4二銀▲3六飛△5二玉という風に、全然違う局面に進むことも考えられます。

基本図からの指し手(1)
△7六飛    ▲3三角成  △同 桂    ▲8四飛    △8二歩    ▲8三歩
△7二金    ▲8二歩成  △同 銀    ▲8五角    △8六飛    ▲8七歩
△8五飛    ▲同 飛



いきなり(1)△7六飛と指した実戦例は、たぶん無いはずです。
▲3三角成に△同金は、▲8四飛△8二歩▲3八金△2六飛▲2七歩。先手がかなり手得していることがお分かりと思いますが、これは大局的に指し得ない。
先手は▲8三歩からどんどん攻めていく手が成立します。▲8五角は強手ですが、△2六飛とすると▲6三角成△8三歩▲7二馬△8四歩▲2七歩で先手優勢。また△8三歩は▲7六角△8四歩▲2一飛でやはり先手有利。
よって飛車角を刺し違えることになりますが、上図は▲2一飛が残り先手が指せそうです。よっていきなりの(1)△7六飛は成立しません。

基本図からの指し手(2)
△2二銀    ▲3六歩



(2)△2二銀は一番初期によく指された変化です。
▲3六歩に対し、戦いを目指すなら△7六飛なのですが、これは▲7七角ぐらいで後手のバランスが悪い形です。こうするなら△5二玉+△7六飛の方がいいでしょう。
駒組みを進めるなら、後手は次の▲3七桂に▲2五桂や▲4五桂を防ぐため、3二の金にひもを付けるのが必須。よって△8二飛は有力ですが、これは▲5八玉△8二飛▲3六歩△2二銀と同一局面なので、また改めて取り上げます。
①△4一玉、②△4二玉、③△2三銀を考えます。

上図からの指し手①
△4一玉    ▲3七桂    △6二銀    ▲2三歩
△8八角成  ▲3二飛成  △同 玉    ▲8八金



①△4一玉は危険という一般的な認識がある手だと思います。
△6二銀は▲4五桂に5三を守るためには、自然な手といえるでしょう。しかし▲2三歩が鋭く、△同銀は▲3三飛成△同桂▲同角成△同金▲7七角で先手よし。△同金も▲3三飛成△同銀(他の取り方も手が続く)▲2四歩△2二金▲4五桂△4四銀▲3四角で先手よし。
よって先に△8八角成とするしかありませんが、▲3二飛成と切り込んでから▲8八金と金で戻すのが深謀遠慮。意味は後でわかります。

上図からの指し手
△2三銀    ▲2二歩    △3三桂    ▲2一歩成
△5五角    ▲3一角    △5一金    ▲7七桂    △4一玉



△2三銀と歩を取る手では△3一銀も有力ですが、▲2二金でどうか。玉が2二に来ると▲7七角が王手飛車になります。
▲2二歩に△4四角を利かそうとするのは、▲2一歩成△8八角成▲2二角△7九馬に▲3一角成以下詰みで先手勝ち。
また▲2一歩成に△同玉は、▲7七角△7六飛▲3三角成が詰めろで先手勝勢。このとき先ほど▲8八同銀としていると、△7八飛成と飛び込まれて負けになります。
△4一玉は必要な手で、△3七角成などと攻めの手を指すと、▲2二と△4一玉▲2三と、の攻めが利いて後手が失敗します。
上図まで進むと、普通に難解な将棋。①△4一玉で不利とは言い切れないような気がします。

指し手②
△4二玉    ▲3七桂    △6二銀    ▲3八銀    △5一金    ▲9六歩
△9四歩



②△4二玉は以前有力とされていた変化ですが、最近はさっぱり見ない気がします。
これには単純な攻めは上手くいかなそうなので、一旦▲3八銀と引き締めて▲9六歩と様子見をします。▲9六歩は▲7七桂と跳ねる手を可能にしています。
▲9六歩に△2七歩を利かすのも手筋で、▲2九歩と交換になって損得不明。また△2六歩も考えられます。
上図までの△9四歩には、▲7七桂には△4四角が先受けの手筋。よって▲3五飛となりそうな気がしますが、ここからは手が広くわかりません。
結論:誰か教えてくださいw

指し手③
△2三銀    ▲3五飛    △4二玉    ▲3七桂    △5二金    ▲3八銀    △8二飛



③△2三銀は部分的にこの前のB1順位戦、三浦九段vs屋敷九段戦で出現しています。ただし先手が勇気流(▲5八玉→▲6八玉)でした。
△2三銀に▲3三飛成と一気呵成に攻めようとするのは、△同桂の後(a)▲同角成△同金▲7七角△8九飛成▲3三角成△6二玉▲8八馬…形勢不明。(b)▲7七角打△8八飛成▲同銀△6二玉▲2四歩△1二銀…形勢不明。
本手は▲3五飛。実戦では△8四飛でしたが、これは勇気流に対応した手と思われます。以下▲3七桂△3四銀と圧迫しますが、▲6五飛に受け方が難しく△5二玉▲2二歩△同金▲3五歩△2三銀▲4五桂となれば先手ペース。
本譜は駒組みになり、後手はじっくり指して手将棋に持ち込むつもり。ソフトが研究に用いられだした頃、新たな感覚の横歩取り(1歩取らせてじっとしているという意味で)としてたまに指されたような将棋です。力戦調で1局ですが、先手としては不満はないでしょう。

次回は(3)△8二飛を考える予定です。検証に際して、間違いや変化の抜けもれがあれば、ご指摘いただけると幸いです。

長いな…(苦笑)

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